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あくまで非公式です

ラグナロクオンラインのクエスト「Strong Stars Story」関連の非公式SSサイトです。はじめての方は「はじめに」をご覧ください。 ©Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. ©GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved

いつか、「強く」なれる日まで(レオン非公式SS)

21歳に成長したレオンのもとに1通の手紙が届いた。
差出人は「ネロ・ファウラー」。

「ネロ……!?
 懐かしいなぁ……あれから何年経つんだっけ……3年……いや、4年かな……?」

これは、レオンがまだ17歳だった頃に経験した、ある2週間の物語の一部である。



レテーナが働くモロクの酒場で、レオンは汗だくになりながらボンバーステーキを食べていた。
そんな時、買い出しで他の街まで出かけていたサビクが見慣れない茶髪の少年と共に酒場へとやってきた。

「レオン、やっぱここにいたか」

サビクは茶髪の少年を連れたまま、レオンの座る席の近くに立った。

「こいつは今日から2週間、俺の弟子になるネロだ」
「……ふぇ!?」

サビクのいきなりの発言に、レオンは目を点にしながら驚いた。

「……でっ……で、で、で……弟子ぃぃいぃーっ!?」

そして、サビクの言葉の意味を理解したレオンの叫び声は、店の外まで響き渡るほどであった。

「おう、お前の弟弟子だ。 
 仲良くしてやれよ?」

正直、レオンの心境は決して良いものではなかった。
どれだけ頼み込んでもなかなか自分を弟子にしてくれなかったサビクが、見た事もない、素性もわからない新しい弟子を連れてきたのだ。
いくら明るく元気な性格のレオンと言えども、この時ばかりは自宅で鼻歌を歌いながらくつろいでいたら、いきなり奈落に落とされたような気分だった。

それでもサビクや、ネロという目の前の少年を不快にさせないよう、レオンは精一杯の笑顔を作り、ネロに右手を差し出した。

「僕はレオン・ターナー、17歳。
 よろしくね、ネロ君!」

しかし、ネロは差し出された右手を握り返さないまま、レオンを威嚇するような口調で自己紹介を始めた。

「ネロ・ファウラー、15歳。
 ……媚びる気はないんで」

「おい、ネロ……お前なぁ……」

いきなり険悪な空気を作り出したネロに、サビクは思わず何かを言いかけたが、その前にネロが再び口を開き、サビクの言葉を途切れさせた。

「俺はテキトーに走り込みしてきますんで。
 ……じゃ」

そう言い残し、酒場を去っていくネロ。
その後ろ姿を無言で見るレオンの顔には、既に作った笑顔も失われ、うっすらと涙が浮かんでいた。

「……」

レオンの表情を見て、気まずそうにサビクは頭をかいた。



「……なんでまた新しい弟子なんて取ったの?
 レオンの時は弟子にするどころか全然稽古にも付き合ってくれなかったのに……」

レオンもいなくなった酒場にて、レテーナは不満そうな声色でサビクにそう言った。

「……色々事情があるんだよ。
 ネロの事情もそうだが、レオンをもう1歩成長させる事も見据えて……だったんだが、なかなか上手くはいかないモンだな」

サビクはどこか寂しげな表情で、グラスに注がれたノンアルコールドリンクを少しずつ飲んでいた。



「フッ……ハァッ!」

木刀を手に素振りを続けるネロ。
それを木陰でサビクとレオンは見ていた。

「……どうだ、アイツの素振りは?
 何か気になる事があったら教えてやると良い」

サビクにそう言われたものの、レオンは何も言わずに黙り込んでいた。
だからといって、決して何も気にならないワケではない。
木刀の握り方や、切り込む角度など、いかにもネロは剣術に慣れていないという感じだった。
レオンはそんなネロの姿を見ながら、過去の自分を思い返していた。

「……僕も前はあんな感じでしたか?」

レオンは思わず、サビクに質問した。

「そうだな。
 ……だが、今はネロの素振りを見ていて、その問題点に気付いた。
 それだけお前は成長したって事だと思うぜ?」

そう答えるサビクはどこか、嬉しそうだった。
サビクにこんな顔をされて黙っているワケにはいかない。
レオンはネロの傍に駆け寄り、声をかけた。

「ネロ君、ちょっといいかな?
 木刀の持ち方だけど……」

優しくネロに声をかけたレオン。
しかし、ネロは挨拶の時と同じように鋭い目でレオンを睨み付けた。

「……アンタに弟子入りしたワケじゃないんで」

ネロは冷たくレオンを突き放すようにそう呟いた。

「そうは言うがな、ネロ……レオンは今のお前より強いぞ」
「……」

サビクの言葉を聞き、ネロは黙り込んでしまった。

「ネロ……お前も強くならなきゃならないんだろ?
 今は、レオンのアドバイスに耳を傾ける……それがお前が強くなるための近道だ。
 まぁ、レオンの強さなんてそんな大層なモンでもないが、な?」

黙り込んでいたネロは無言で木刀をレオンに差し出した。

「……じゃあ、見せてください。
 見て、覚えるんで……」

気難しいけど、師であるサビクの言葉には従う。
そんなネロを見ていたらレオンは何故かネロを放っておけなくなり、差し出された木刀を構えて素振りを見せた。
ネロとサビクは、何も言わずにただ、真剣な眼差しでレオンの素振りを見続けていた。



その日の夜。
1人で木刀を振り続けるネロの前に、サビクが現れた。

「……モロクの夜は冷えるだろ?
 店で暖かいモンでも飲まないか?  ま、未成年に酒は出せないけどな」

サビクの誘いへの返事はしないまま、ネロは全く別の話をしはじめた。

「……レオンさんの剣には迷いがない。
 それが、今の俺との一番の違いです」

俯きながら、ネロはそう呟いた。
ネロの言葉からは悔しさが嫌というほどに伝わってきた。

「……あのな、ネロ。
 誰にだってなにかしら、抱えてる荷物があるモンだ。
 お前にだけじゃなく、俺にもあるからな」
「……」
「……だがレオンは、荷物が重くても、自分自身がどれだけボロボロでも頑張ってまっすぐ前を向くヤツなんだ。
 そういう所、俺も密かに尊敬してるんだぜ?」

サビクの意外な発言に、ネロは思わず木刀を手放し、問いかけた。

「……サビクさんが……?」
「あぁ……
 でも、レオンには言うなよ?
 アイツ、すぐに調子に乗るからな」

サビクが苦笑しながらそう話すと、ネロも思わず笑みをこぼしてしまった。

「……そっちの方が似合ってるぜ、ネロ」

サビクはネロに背を向け、満天の星を見上げながらこう続けた。

「昔、ある若造が言った言葉だ。
 ……『人間には、前に進むために足がある。
 だから、立ち止まってなきゃいけない理由はない。
 走り出したらどこまでも行ける』……ってな」

「前に進むために……足がある……?」

「……じゃ、俺は店にいるから、凍え死ぬ前に来いよ?」

背を向けたまま、サビクはそう言って酒場の方へ歩き出した。

「……待ってください。
 俺も、行きますんで……」



翌朝。
「いつもの場所」にレオンがやってくると、そこには熱心に素振りを続けるネロの姿があった。

「……おはよう!
 頑張ってるみたいだね」

レオンがそう話しかけると、ネロは木刀を下ろし、深くレオンに頭を下げた。

「……おはよう……ございます。
  色々……すみませんでした」

明らかに昨日までとは違うネロの態度に、レオンは思わず言葉を失ってしまった。

「……えっと……どうしたの……?」

言葉を取り戻したレオンがそう質問するとネロは、
「失礼があったと思ったから謝っただけです。
 それ以上の意味はないんで……」
と返した。

「……レオン……さん、俺と、手合わせしてください。
 一度、自分がどれだけ弱いのか、確かめておきたいんで……」

そう言いながら、再び深く頭を下げるネロ。
そんなネロに戸惑いながらも、レオンは手合わせを引き受けた。



「……ハァッ!」

ネロはレオンの顔面に向かって思いっきり木刀を振り下ろした。
しかし、レオンはそれを捌き、あっという間にネロの後方へと回り込んだ。
慌てて振り向いたネロだったが……

「そこっ!」

レオンの木刀がネロの目の前に向けられた。
これが真剣勝負だったなら、ネロは命を落としていたかもしれない。
ネロは自分の敗北を認め、俯きながら木刀を下ろした。

「……参りました」

敗北を認めたネロだったが、レオンはネロと距離を取り、再び木刀を構えた。

「さぁ、いつまでも落ち込んでないで次行くよ!」
「つ、次……?
 ……今のが俺の実力で……何度やっても結果は……」
「1回やってダメだったから諦める……ネロ君はそれで満足なの?」

レオンの言葉にネロは驚きを隠せなかった。

「これは手合わせ、実戦じゃないんだ。
 強くなりたいなら何度でも、何度でも、納得がいくまでやればいいんだよ。
 いつか、強くなれる日まで!」

太陽のようにまぶしい笑みを浮かべながら、レオンはそう言った。
ネロは、その笑顔を見て小さく微笑み、「……はい!」と木刀を構えた。



「……少し前に父が死んだんです」

手合わせが終わり、レオンとネロは一緒に休憩しながら会話していた。

「残された家族は、母さんと俺と弟だけ……
 母さんは身体が弱くて病気がちだし、弟はまだ子供だから……
 だから、俺が強くなって、母さんを、弟を守らなきゃって」

ネロの口から語られた、サビクへ弟子入りした理由。
その話を聞きながら、レオンは涙をこぼしていた。

「ネロ君……若いのに大変なんだね……」

涙ながらにレオンが口にした言葉はとても17歳のものとは思えないような代物だった。

「大変なんて……!
 思って……ない……ワケ、でもない、ですけど……」

(……正直、俺はずっと不安だったんだ。
 ……俺1人で、家族を守っていけるのか……って……
 でも、サビクさんと……レオンさんと会って、気持ちが変わった。
 ……「守っていけるのか」じゃなく「守れるように強くならなきゃいけない」んだ。
 『人間には、前に進むために足がある』……それなら、俺はなってみせる。
  いつか、家族を守れる強い男に……!)



ネロが1人決意を胸にしていた時、傍にある木の上で2人の若者を見守っていた男は、誰にも気付かれる事なくその場を去っていった。
……優しい笑みを浮かべながら。



時は戻り、21歳に成長したレオンはネロから届いた近況の記された手紙を読みながら、
きっとネロなら今頃は強く立派になって家族を守っているんだろうなと思い、優しげな笑みを浮かべていた。
そしてレオンも、「兄弟子」として負けないように頑張ろう!という気持ちのまま、モノマキア・ラミナを持って部屋を後にした。



(後書き)
ハッピーバースデー、レオン!
…というワケで、今年もレオンの話を書かせていただきました。
誕生日に間に合わせなきゃ!と早めに取りかかったのですが、無事間に合ってよかったですw

今回の話はですね、レオンの誕生花「マリーゴールド」の花言葉には「嫉妬」というのもあるという辺りから
ピュアで前向きなレオンを嫉妬させるには、やはりサビクが新しい弟子を作るしかないな!
という意地悪い気持ちがきっかけでしたw

ただ、サビクが理由もなく新しい弟子を取ったりはしないだろう、という事でネロのキャラクター像を膨らませていき、
サビクならば放っておけないであろう「家族を守らなきゃいけない」という理由を作ったワケです。

同時にこの話では一貫してレオンに木刀を使わせてます。
これはネロと同じものにという流れではありますが、それを見ながらサビクさんは
「レオンには両手剣(大剣)より向いている武器があるんじゃないか?」と感じたり、という意図もあったりします。

ネロという名前は既にお気付きかもしれませんがLEON→NELOとレオンのアナグラムです。
(NEROの方が一般的ですが、アナグラムですので…)
苗字のファウラーは、ターナーが海外テレビドラマ「フルハウス」に登場するタナー家を密かに意識していたのに対して、
その続編である「フラーハウス」のフラー家を意識した苗字となっています。
なお、タナー(Tanner)とターナー(Turner)は別の苗字ですし、フラー(Fuller)とファウラー(Fowler)は言うまでもありませんねw

性格面でもまっすぐで元気いっぱいに明るいレオンに対し、ひねくれた雰囲気で影のあるネロになってます。
(ネロはネロで人付き合いが下手というか、自分を表に出すのが苦手なだけで決して悪い子じゃないんですけどね)

「あの日見た勇姿」のカンケルとネロの弟あたりが将来成長して一緒に旅をするようになってたらネクストジェネレーション!って感じで楽しいですよねー。
書く予定はありませんがw

レオンの誕生日の話にしてはネロ中心になっちゃってたりしますが、レオンというキャラクターの今後を考えると、
レオンメインでデカい話をやるならサビクと……というか、S.S.S.から切り離した「レオンの物語」にしてあげたいんですよね。
サビクを慕う少年を卒業し、新しい仲間と新しい冒険!みたいな。
その一方でレオンへの親心として、もう少し今のままでいて欲しい気持ちもあるために、レオンの話でありながらレオン中心ではないという微妙に矛盾した話が続いています。

ネロがどこでどうやってサビクと知り合ったのかなど触れていない部分もあるのですが、そこは無理に説明しなくても話は成立するため、今回は省かせていただきました。

あ、サビクが言った若造の言葉ですが、これを誰が言ったのかは(察してるかもしれませんけど)内緒にしときます。
もしかして星七号!?…ではないですね、たぶんw

レオンに関して、キャラモチーフは「ヒーローに憧れる少年の心そのもの」という認識でいましたが、
もしかすると無意識のうちに自分の小学生時代に同じ部活だったある後輩をイメージしてた可能性があるかも、と最近思ったり。

脳内再生してる声というか、喋り方がなんとなくその後輩と似てるんですよw
いつも楽しそうに「○○せんぱぁーい!」って言ってくるのが可愛くてw
部活面ではそこまで優秀じゃなかった気がしますけど(俺自身落ちこぼれの代表格でしたが)、その後輩は自然と人に好かれるタイプの人間だったと思います。



オマケ!
れの字さん(現通りすがりのトルシュさん)からレオンお守りの画像をお見せしていただいたので載っけておきます。
レオンもサビクも幸福者め!
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コメント

1. 目が覚めたら日を跨いでいただと…!?

 どうしよう、課題途中で寝落ちしてしまった…
まあ、何はともあれレオン誕だヒャッホイ! ということでお邪魔します。

 「嫉妬」… レオンには似合いそうにないと思いましたが、人間ですもんね。
誰かに妬いたりするようなことがあっても、別におかしくないか。
 しかし、そこでネロ君と正面から向き合えるところがやっぱりレオンらしい。
いいぞ、少年達。 これからも成長する姿を見せてくれ(←何様?)
 最後の「木の上」で、思わず文を二度見致しました。
「木の陰」じゃないあたり、サビクさん流石だな(?)と思ってしまいましたw

 フルハウスは再放送でしかみられませんでしたが、大好きですねぇ。
ミシェル可愛いです。 …べ、別にロリコンじゃないし(←)
実はアイリちゃんとステフを重ねて観てたこともあります。 可愛い。

Re:目が覚めたら日を跨いでいただと…!?

お祝いありがとうございます!

>「嫉妬」
去年の誕生日SSは素直にレオンのその後を描いていたので、今年は変化球といいますか、レオンが成長していく仮定で味わったマイナスの感情からお話を始めた次第です。
レオンはメインキャラたちと比べると負の感情をあまり出さないので、ちょっとした聖人なんじゃ?という感じもありましたからw

>これからも成長する姿を見せてくれ
そうですね、自分自身こういう若者たちがどう成長していくのか楽しみです。

>「木の上」
あ、お気付きになりましたかw
いつもサビクは木陰で見守ってるイメージなんですが、今回は「自分がいない中での二人の弟子」を見守りたい、と実はネロが来る前から木の上にいましたw

>フルハウス
自分は現在リアルに姪っ子においたんと呼ばれておりますw
たしかにアイリとステフは似た部分もありますし、S.S.S.の疑似兄弟(疑似家族)という辺りも実はフルハウスと近いものがあるのかもしれませんねw

2. ほんとだ! 木の上だったwwwwww

 木の陰と思っていた人がここにもいましたw
 私もネロ君に嫉妬しまくりだったのは内緒ですよ。

 というわけで、ハッピーバースデーレオン!
 そしてお祝いするはずの相手に守ってもらおうという、なんともずうずうしい私です。
 (お守りの写真はROSNSに掲載したものです。)

 でもきっと、この効力はサビクさん限定。

Re:ほんとだ! 木の上だったwwwwww

お祝いありがとうございます!

>木の陰と思っていた人
フッフッフ…サビクさんは早朝に木登りしちゃうようなアラサーなのですよw

>私もネロ君に嫉妬しまくりだったのは内緒
ごめんなさい、実は狙いましたw
たぶん、ネロがレオン2号みたいな性格で、ネロがサビクに憧れる過程から見せちゃえばたぶんしっくり見れたと思うんですが、
今回は「嫉妬」していただくために、あえてネロには嫉妬されるような立ち回りをさせました。
…最後にはネロへのマイナスイメージが薄れてくれてると良いのですが(汗)。

>お守り
うおー、すごい!
ウチの子を愛してくれてありがとうございますw
せっかくなので記事の最後に画像載っけさせていただきますね!

プロフィール

HN:
星七号
職業:
ゲーム作ったり話書いたりする人