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Side:Shadow 14「傷だらけの旅烏」


Strong Stars Story
  Side:Shadow
   14「傷だらけの旅烏」

店を出たサビクは例の大きな木の下に座り、
火がついていない煙草をくわえたまま、宙を見ていた。

「……お前はいつもここにいるな」

俺の言葉を聞きながらも、サビクはそのまま宙を見続けていた。

「どこにいようが、俺の勝手だろ」

サビクからは、俺に関わるなという空気が感じられたが、
俺は気にせず、サビクの隣に腰かけた。

「……」
「……」

長い沈黙が俺達を包んだ。

「本当にお前がやったのか?」……そう聞く事は簡単だが、
聞いたところで、サビクが素直に答えるだろうか。

俺がどう切り出すべきかと考えている中、先に口を開いたのはサビクだった。

 「テンジ……だったか?
 お前に1つ、頼みがある」

決して俺の顔を見る事はなく、宙を見上げたまま、サビクは一方的に話し続けた。

「たまにで良い。
 レオンに稽古、つけてやってくれ」

まさか、サビクの口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
俺は思わず「何故だ?」と問いかけたが、サビクが答えを返す事はなかった。

「……実は昨日、レナにも同じ提案をされたが、断らせてもらった。
 俺の剣は、誰かに教えるようなモノじゃないからな」

そう説明すると、サビクは静かに煙草をしまい、立ち上がった。

「俺は……この街を出ようと思う。
 俺には、旅烏の方が性にあってるんだ」

サビクは静かに、そう言っていた。

「用心棒の仕事はどうするつもりだ?」

「俺なんか、居ても居なくても変わらねェよ。
 それどころか、今回みたいな騒ぎが起きなくなるだろうさ。
 ……元々、長く居座るつもりはなかったんだしな」

……本当に、サビクをこのまま立ち去らせてしまって、良いのだろうか。
レオンは……レナは……サビクがいなくなったらどう思うだろうか。

そう思う一方で、どうするかはサビクが決める事……
親しいレナやレオンならまだしも、
第三者である俺が口を出す問題ではないようにも思える……

黙り込む俺を前に、サビクは相変わらずの寂しげな笑みを浮かべ、
そして腰に差した短剣を俺に差し出した。

「せめて、こいつをレオンに渡してやってくれないか。
 アイツにあのデカい剣は合ってない。
 鍛える云々の前に、根本的に向いてねェんだ。
 ……だが、こいつなら少しは使えるかもしれないからな」

不器用なその言葉は、なんだかんだでサビクもレオンを気にかけていた事を意味していた。
本当に無関心だったのなら、こんな言葉は出てこないだろう。

俺が短剣を受け取ると、サビクは満足したように背を向けて呟いた。

「……俺はもう、誰かと関わるのは御免だ。
 関わって、誰かを傷付けたり……
 自分の非力さを味わうのは、もう嫌なんだ。

 ここに来る前と同じ、旅烏に俺は戻る。
 縁があったら会う事もあるだろ。
 そン時はまた、美味い酒でも飲もうぜ、お前の奢りでな」

街の外へと、サビクは歩き始めた。

「本当に、お前はそれで良いのか……?

 濡れ衣を着せられたまま……レナやレオンを傷付けたままで良いのか……!?」

俺がどんな言葉をかけようと、
サビクが振り返る事はなく、そのままサビクはこの街を去っていった。
その背中は笑顔と同じように、寂しげな空気を感じさせるものだった。


サビク……お前は、本当にそれで良いのか……?





俺がフォルトゥナに戻ると、開店前の静かな店内に
レナとレオン、そして無口な店主の姿があった。

俺はサビクから受け取った短剣を、レオンに差し出した。

「……サビクから、お前に渡すよう頼まれた」

レオンはその短剣を見ながら、意味もわからぬ様子で俺の顔を見ていた。

「……サビクは、この街を出ていった。
 これは……あいつなりにお前の成長を願ってのものなのだろう」

「ちょっと、サビクが出ていったっって本当……!?」

レナは信じられないといった表情で俺を見ていた。

「仕事をサボるだけでも迷惑なのに……どこまで迷惑かけたら気が済むのよ……
 “今度会ったら”、タダじゃおかないんだから……!」

「サビクさん……どうして急に……」

やはりいきなりの出来事を受け止められないのか、
レオンは動揺を隠しきれない様子だった。
レナはいつも通りに振る舞おうとしているようだが、
発言から察するに彼女も動揺しているのだろう。

「……やっぱり、あれはサビクさんが犯人じゃなかったんだよ!
 それなのに濡れ衣を着せられて、それが嫌で……!
 だから、サビクさんは……っ!!」

レオンはサビクの短剣を片手に、慌てて店を飛び出そうとしていた。

「レオン、どこに行くんだ!?」

無口な店主が珍しく慌てて問いかけた。

「サビクさんを追いかけるんだよ!
 会って、約束するんだ!!
 ボクが絶対……絶対に、犯人を捕まえてみせるって!!」

真剣な表情でそう言い切るレオンだが、
果たして、サビクが本当にそれを望んでいるのだろうか……

俺の頭の中に、サビクの言葉が響いていた。

『知った風な口を利くんじゃねェ……
 お前に俺の何がわかるんだ?』

……サビクには、サビクの考えが、想いがある……

『……俺はもう、誰かと関わるのは御免だ。
 関わって、誰かを傷付けたり……
 自分の非力さを味わうのは、もう嫌なんだ』

俺に、サビクの思考の全てはわからない。
……だが、今のサビクは恐らく、1人になろうとしている。

そんな男に、無理に手を差し伸べても良い方向へ向かうとは限らないだろう。

それなら……

「……サビクの行き先に見当はついている。
 今はそれよりも、本当に犯人はサビクだったのか……
 真犯人は別に存在しているのか……まずはそれを調べよう」

サビクの行き先を知る術ある。
だからこそ、今は無理にサビクを追うよりも、もう1つの問題を解決するべきだ。

サビクが戻ってきやすい環境を作るためにも。

「……そうね」

俺の言葉にレナは同意し、店主も静かに頷いた。
レオンはあまり納得がいかない様子だったが、考え込んだ末に

「それで、サビクさんが戻ってくるなら……」

と首を縦に振っていた。



(星七号の独り言)
サビク編の雨季 Part2。

スピカ編以上に、色々と本家とは違う展開になっていく…かも?
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