Strong Stars Story
Side:Shadow
35「結末の先へ」
アーシアは、ゴルドが身に付けていた仮面を奪っていた。
「……ッ!?
仮面を返せ……ッ!!」
ゴルドは振り返りながら攻撃を仕掛けたが、
アーシアは笑いながら瞬時に姿を消してしまった。
「わぁ、イッケメン!
プププププッ……!」
それまで隠されていた、ゴルドの緑色の瞳と素顔がその場に晒されると、
どこからか、あの下卑た笑い声が聞こえてきた。
「ケケケッ、ケケケケケケケッ……」
「黙れ……!」
ゴルドは声のする方向を撃つが、その声が途切れる事はなかった。
「……やっぱオマエだったか……
そうじゃねぇかとは思ってたんだよなぁ~?」
「黙れェェェッ!!」
ゴルドは闇雲に銃を乱射した。
しかし、それでもその声が止む事はなく、ついには残弾が尽きてしまったようだ。
「この日をどれだけ待っていたか……
会いたかったゼ……愛しい『我が子』ッ!!」
ゴルドの目の前に現れたナガサーは、そう言って両手を広げた。
「……ふざけるな……
俺は一瞬たりとも、貴様を親と思った事はないッ!!」
ゴルドはコートの袖から爆弾のようなものを壁へと投げ付け
「ファントムッ!!」と叫んだ。
周囲を眩い光が包み込み……
俺達がいた施設は、その爆発によって壊滅した。
※
気が付くと俺達は、首都にある騎士団の本部の前に立っていた。
俺とゴルドに騎士達……誰もが状況を理解出来ぬまま、周囲を見渡していた。
「フリードは……!?」
どれだけ周囲を見渡そうとも、フリードの姿はどこにもなかった。
静寂が俺達を包む中、1人の騎士が、涙ながらに口を開いた。
「……恐らくフリード隊長は、あの爆発の瞬間、俺達に転移魔法をかけたんだと思います……
あの爆発で、施設は機能を停止する……
だから最期の力で……
隊長は、そういう人です……」
俺は、騎士の言葉を飲み込めずにいた。
まだフリードが生きている……俺は、そう思いたかったのかもしれない。
一方、仮面を奪われ、素顔のままのゴルドは、
俺達に背を向けたまま静かに怒りを堪え、震えているようだった。
「……ッ……」
ゴルドは俺達に正面を見せなかったため、
その緑色の瞳に涙が浮かんでいたのか、確認は出来なかった。
言葉も交わさぬまま、これからについて考える俺の後方から、
どこかで聞いた声が聞こえてきた。
「あれっ、テンジだよね?」
振り返ると、そこには完全無欠の冒険者・スピカが立っていた。
「それに、ルファクも一緒なんだね。
もしかして、2人は知り合いなのかな?」
スピカは、笑顔でそう話した。
……ルファク……?
ルファクという名には覚えがある。
そうだ、確か……
※
……血に染まった病室。
一人、スターオーブを見つめる者がいた。
その者は無表情にスターオーブを見つめたまま、呟いていた。
「……帰ろう……あの場所に。
終わらせよう……この拳(て)で。
……行こう……いつか辿り着けなかった『結末』の先へ。
……さぁ、終わりの続きを始めようよ」
血染めの病室に、どこからともなく不穏な風が吹いていた。
(星七号の独り言)
はい、後味が悪い感じですが、ここでルファク編は終了となります。
本当ならテンジ&ルファク側は、
「愛しい『我が子』ッ!!」で切り上げて、続きは次のシリーズに回すつもりでいたのですが、
テンジも「ルファク」という名前には辿り着くべきだろう、と
もう少し進めておきました。
ナガサーについての掘り下げをようやく出来る事がとても嬉しいです。
随分かかりましたね。
そんなこんなではありますが、
次回まではまた少し間が空く予定です。
お待たせしてしまってすみませんが、
長い目で見ていただけると嬉しいです。
1. 我が…
Re:我が…
実は「パテラ」という名前に秘密を隠していて、ギリシャ語の「パテラス」が元ネタでした。