当ブログのSSは個人的に作成した非公式なものです。それを踏まえてご覧いただけると嬉しいです。 忍者ブログ

あくまで非公式です

ラグナロクオンラインのクエスト「Strong Stars Story」関連の非公式SSサイトです。はじめての方は「はじめに」をご覧ください。 ©Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. ©GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved

Side:Shadow 5「完全無欠」


 Strong Stars Story
  Side:Shadow
   5「完全無欠」


大きな闇が、うねりながら私を飲み込もうとしていた。

「私は……負けられない……っ!」

私は剣を構えて闇を斬り裂こうとした……
が、実体を持たない闇は断ち斬れず、攻撃はすり抜けてしまうだけだった。

闇が大きくうねり、私の右腕を飲み込んだ。
闇に飲まれた右腕はまるで言う事を効かず、失われたも同然の状態だった。

「……くっ……!?」

これじゃあ、戦えない……!?
……いや、まだ左手がある……っ!

私は慣れない左手で剣を拾い上げ、構えた。
しかし、強大な闇によって、
私の足は、腕は、体は、顔は、次々と飲み込まれそうになっていた。

「ダメっ……
 もう、これ以上戦えないよ……兄さん……っ……」





「スピカ、どうかしたのか?」

何度見たかもわからない悪夢の光景が一転、
私の前には、「いつも」と変わらない「兄さん」の姿があった。


「……また、こわい夢を見たの……」

そう話す私に、兄さんは優しく微笑み、頭を撫でてくれた。

「でも、夢でよかったな」
「……うん……」


私は、今にも泣き出しそうな、不安に溢れた表情で兄さんに問いかけた。

「……兄さんは、戦うのがこわくないの……?」

私の問いかけに、兄さんは一瞬だけ考えた後、小さく笑っていた。

「……恐いさ。
 今までだって、何度も人が目の前で死んだ。
 今度は俺の番……そう思うと恐くて仕方ない」

兄さんの言葉を聞いて、私は顔を伏せてしまった。
でも、兄さんの言葉はそれだけでは終わらなかった。

「……だから、俺は目の前の現実に、全力で立ち向かうんだ。
 死なないために……生きるために……
 全力で生きる事、それが、未来に繋がる……ような気がするからさ!」

兄さんの笑顔は、より明るいものへと変わっていった。
その笑顔につられて、私も、いつの間にか笑顔になっていた。

「悩んだ時は、自分にこう言い聞かせるんだ。
 『一度走り出したら立ち止まるな。
  最後まで走り続けろ!』
 一緒に、全力で生き抜こうぜ、今を!」

そう言った後、兄さんは「なんて、ちょっとクサかったか?」と、
顔を少し赤くして笑っていた。
そんな兄さんの笑顔に、私はいつも助けられていた。





でも、今はもう……あの頃、私達に優しく手を差し伸べてくれた兄さんはどこにもいない。

「……」

兄さんの時間は、あの日、あの時、止まってしまった。
……だから、私が……私が兄さんの代わりに強くなろうと思った。
強くならなきゃいけないと思った。

多くの人を守って、助けて、力になって……
私が兄さんにしてもらったように、私がみんなに手を差し伸べたい。
そのために私は、茨の道を走り始めたんだ。

誰にも頼らずに……いつも、1人で……

もう、恐くない。
もう、痛くない。
もう、逃げ出さない。

たとえ、苦しんでも、傷付いても、何かを失ったとしても、
誰かの力になれるならそれで良い……

一度走り出したら立ち止まるな。
最後まで走り続けろ!

……そうだよね、兄さん。

私はもう、あの頃の弱い私じゃないよ。





目が覚めるとそこは、港街のベンチだった。
いつの間に眠ってしまったのだろう……
気が付くと、私の目からは涙が流れているようだった。

「……スピカ、どうかしたのか?」

傍にいたテンジが私に問いかけた。


「ううん、なんでもないよ」

私は頑張ってなんとかいつものように、明るく振る舞って見せた。

そんな時だった。
ハイデルさんが、私の名前を呼びながら、一生懸命に駆け寄ってきた。

「ハイデルさん……?
 どうかしたんですか……?」
「たっ、大変なんですっ!
 私が取り寄せた研究材料が刃物を持った男に盗まれてしまって……!」

ハイデルさんが困っている……私が、力にならないと……!

「私に任せてください!
 場所は、どこですか?」

私に続くように、テンジも
「俺も行こう」と名乗りを上げた。

「どっちが犯人を捕まえるか、また勝負だね。
 私、負けないからね!」

私がそう言うとテンジは
「争う必要があるのか……?」
と疑問を口にしていたが、私はその疑問に答えを出さないまま、剣を持って現場に駆け出した。

「モタモタしてると置いてくよ!
 一度走り出したら、立ち止まるな!
 最後まで走り続けろ! ……なんてね!」



(星七号の独り言)
星七号、夢ネタ使いすぎ問題。
いや、今回のは大きく意味があるので、許してくださいw

遠い日に全面的に自分で書いたSide:スピカをセルフリメイクするにあたって
何をやりたいかなーと考えた時に、このエピソードは欠かせないよな、と思ってた部分です。

最近更新ペースを上げていますが、毎回これでやれるワケではありませんw
スピカ編が終わるまではテンポ良く行きたいですが…仕事状況と体調次第かな。
PR

コメント

プロフィール

HN:
星七号
職業:
ゲーム作ったり話書いたりする人