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Side:Shadow EX3「秘密の大追跡」

Strong Stars Story
  Side:Shadow
   EX3「秘密の大追跡」

酒場「デイブレイク」にて。

俺はまたしても、イルという名の脅威を前に、冷や汗をかいていた。

「テンジちゃん、実はねアタシ……秘密にしてる事があるの」

「……そうか。
 人間秘密の1つや2つあって良いだろう……秘密のままにしておけ」

俺はあえて会話が長引かないような返答をしたのだが、イルは
「んもぅ、ちゃんと聞いてくれなきゃ……イ・ヤ・よ?」
などと言いながら、俺に近寄ってきた。

やはり今回も俺が慌てていると、ランドルフが
困ったような笑顔で助け船を出してくれた。

「そうだ、テンジ。
 魔法都市まで届け物をしてもらえないかい?」
「行こう、すぐに行こう。
 そういうワケだ、悪いな、イル」
「もう、ツレないのね……楽しくなりそうだったのに」

そんなこんなで、俺はイルという名の脅威から逃げるようにデイブレイクを出た。





届け物を、ランドルフの知り合いがやっているという店へ届け、
ぼんやりと空を眺めていると、覚えのある声が聞こえてきた。

「あ、テンジお兄ちゃん……」
「もしかして、あたしたちに会いに来たの?」

振り返ると、そこにはアルナとアイリ、そしてサブリナの姿があった。

「……まぁ、そんなところだ」

俺が小さく笑うと、アルナとアイリは嬉しそうに笑顔を見せた。

「家に寄るよね?
 お兄ちゃんに見せたいぬいぐるみがあってさ!」
「ま、待って、アイちゃん……
 わ、わたしもお兄ちゃんに見てほし本が……」

アイリが先に俺の右手を掴み、負けじとアルナは左手を掴む。

「先手必勝! だもんねっ!」
「もう、アイちゃんってば……」

屈託のない笑顔を見せるアイリと、少し不満そうなアルナ。
そんな2人の言動に、どうして良いかわからずにいる俺を見ながら、
サブリナは穏やかな笑顔を見せていた。

「ふふっ、両手に花ですね」
「あぁ……どうしてこうなったのかわからんがな……」

俺は困惑したまま、二人のお嬢様に手を引かれながら、ジェメリー家を訪れたのだった。





見事に快復したジェメリー夫人の好意もあり、その日の夕飯に招かれた。
俺は今までの人生で食べた事もないような、
名前も知らない豪華な料理をいくつもご馳走になった。

俺が満腹感という幸福に浸かっていると、アルナとアイリが笑顔で声をかけてきた。

「あのね、お兄ちゃん……もしよかったら……」
「今日はもう遅いし、泊まっていってよ!」

……確かに、外はすっかり暗くなっていた。
これから魔法都市を出ても、夜行性のモンスターとの戦いは避けられないだろう。
太刀打ち出来ない事はないとしても、
せっかくの満腹感が無意味な戦闘で失われてしまうのは勿体ない。

「……わかった」

俺が首を縦に振ると、アイリは笑顔で、
「やったー!
 じゃあ、明日はまた遊園地行こ!
 お金なら、ダイジョーブだから!」
と抱きついてきた。

「それは良いですね。
 明日は私、お休みをいただいていますから、
 身体測定が終わった後は、たっぷりテンジ様に遊んでもらってください♪」

サブリナはいつもの穏やかな笑顔でそう話していた。

「えっ、明日はサブリナいないの?」

「はい。
 少し故郷に用がありまして……翌日、お嬢様がたが目覚めるまでには帰ってきますよ」

サブリナがそう答えると、アイリはしばらく考え込んだ。

「うーん……
 遊園地も良いけど、サブリナの故郷……気になる……っ!」

アイリは何か楽しい事を考えているのだろう。
笑顔が溢れていた。

「気にしていただけるのは嬉しいですが、明日は朝早くに出ますし……
 お嬢様がたはお昼から身体測定がございますので、
 今回一緒に行くのは……ちょっと難しいですよ」

サブリナが穏やかに制止しているものの、
アイリは「わかった」とは一言も口にしていなかった。

そしてそれが、明日どんな出来事が起こるかの予兆である事を、
この時俺は、なんとなく覚悟していた……





ジェメリー家の客室で眠っていた俺は、何かの衝撃によって目が覚めた。

「おはよっ!」

俺の身体の上には、パジャマ姿のアイリの姿が、
隣にはアイリとお揃いのパジャマで困った表情のアルナの姿があった。

「アイちゃん、いくらお兄ちゃんでも、そんな風に起こすのは良くないよ……?」
「ほら、お兄ちゃん、早く準備して!
 早くしないと、サブリナに置いてかれちゃう!」

アイリか興味を持ったならば、
何が何でもサブリナについて行こうとするだろう……
予想はしていたが、その予想は現実のものとなった。

「アイちゃん、やっぱりダメだよ……
 今日は身体測定もあるし……」

「たまにはサボっちゃってもダイジョーブ!
 そんな事より、サブリナの故郷の方が気になるも~ん♪」

後から聞いた話だが、その時アルナは、
身体測定で今回こそアイリの身長を抜けるのではないかと
少しだけ楽しみにしていたらしい。

しかし、アイリと俺までサブリナの故郷に行くとなってしまったため、
結局、アルナも俺達と共にサブリナを尾行するように
故郷までの道程を追いかけていくのだった。





「……なんだか、探偵になった気分!
 大人になったら探偵になりたいって思ってたんだ!」

アイリは明るい笑顔を見せながらそう言っていた。

「アイちゃん、この間は怪盗になりたいって言ってたような……?」

「怪盗にもなりたいし、探偵にもなりたい♪」

「……夢がいっぱいあるんだね、アイちゃん」

少し困ったように微笑むアルナは、どんな夢を持っているのだろうか。
それは、またの機会に聞いてみるとしよう。





そんなやり取りを挟みながらも、
俺達は大陸から遠く離れた、南の島国へとやってきていた。

「ここが、サブリナさんの故郷なんだ……!」

アルナは、本でしか見た事がなかったような景色に目を輝かせていた。

まさかサブリナの故郷が南方の島国だとは思ってもみなかった。
だが、あの温厚な性格は、
もしかすると暖かい気候の中で育ったからこそのものなのかもしれない。
俺は一人でそんな事を考え、納得していた。

気が付くと、遠くでサブリナは誰かと話をしているようだった。

「アッ……アンタまさか……!?
 『鉄壁のサブリナ』かい……ッ!?」

俺達は『鉄壁のサブリナ』の名を耳にし、目を丸くしていた。

「はい、お久しぶりですっ、お元気そうですね」

サブリナは微笑みながらその場を去っていくと、
アイリはすかさずサブリナが話していた男に声をかけていた。

「ねー、おじさん。
 あたし、サブリナの知り合いなんだけど、
 昔のサブリナってどんな人だったの?」

「……や、やめてくれ、あの時の事は思い出したくないんだ……」

男は怯えるようにそう呟き、アイリの質問に答える事はなかった。





その後もサブリナを観察していると、島の人々から、
『幻闘士』、『夢鴉』、『踊る妖精』、『闇夜のエンターテイナー』、
『武姫』、『綺羅女王』、『伝説のスターマイン』
と非常に多くの異名で呼ばれていた。
しかし、誰1人としてサブリナの過去を話す者はおらず、
誰もが「あの時の事は思い出したくない」の一点張りだった。

「……もうっ!
 なんで誰も教えてくれないのっ!?」

アイリは不機嫌そうに頬を膨らませていた。
そして、1人考え込んでいたアルナは、静かに口を開いた。

「……アイちゃん、テンジお兄ちゃん……あのね……?
 たぶんサブリナさん、すぐ近くでわたしたちを見てると思うな……?」

アルナの言葉に、アイリは目を丸くしながら尋ねた。

「どういう事……?」

「サブリナさん、わたしたちが後をつけてきたって気付いてるんだよ。
 だから、お友達と一緒に、
 ちょっとだけわたしたちをからかってるんじゃないかな……?」

アルナがそう言うと、木陰から「流石はアルナお嬢様ですね」という声が聞こえてきた。

「あっ! サブリナ……!?」

「まったくもう、身体測定サボっちゃダメじゃないですか。
 テンジ様もテンジ様ですよ?」

サブリナは少し怒ったようにそう言っていた。

「ごめんなさい……」
「ごめんなさい……」
「……すまない」

俺達3人は、サブリナを前に頭を下げた。
それを見て、サブリナは仕方ないと言わんばかりに、小さく微笑んでいた。

「……まったくもう、私の故郷に来たかったのなら、またいつでもお連れしましたのに……」

「だって、いつでもじゃなく、今日がよかったんだもん……」
「わたしたちが知らないサブリナさんを知る良い機会だと思って……」

困ったような顔でそう話すアルナとアイリを前に、
サブリナは
「全く、仕方のないお嬢様がたですね」
と、穏やかな笑顔で微笑んでいた。





……帰りの船の上で、
眠るアルナとアイリを見つめながら俺はサブリナと会話をしていた。

「想定よりも早い帰りだが、良かったのか?」

「はい。
 用事は済みましたし、お嬢様がたをお待たせするワケにはいきませんから……」

そう言ってサブリナは穏やかな笑顔を見せた。

「……ところで、中には本物の異名もいくつかあったんじゃないのか?」

俺は、ずっと疑問に思っていた事をサブリナにぶつけてみた。

「うーん……そうですねー……

 それは、秘密です♪」



(星七号の独り言)
やっと書けた!
お待たせいたしました、アルナ&アイリ編のEX話でした。

本家の初期構想では、アイリが怪盗アニバーサリーちゃんのファンなので、
アニバーサリーちゃんに縁がある地を巡る~みたいなExtra Episodeを想定していて。

そこから紆余曲折あり、
結局本家の実装版ではスピカExtraの行き先がルティエになったような調整となり、
サビクExtraだけ別の流れになっちゃったなぁーというのが個人的にありました。

全キャラ同じパターンか、違うパターンか、
どちらかにしたいと思っていたので、実装後、長らく気になっていた部分でした。

Side:ShadowはROから切り離したものなので、
アニバーサリーちゃんの名前は出さないほうが良い。
別の怪盗設定にしようかとも思ったし、そこでテンジが
「怪盗は知らないが、知り合いに忍者ならいるぞ」
とNINJAを紹介、アルナとアイリがNINJAの修行を受ける…というのも考えた。

それでもイマイチしっくりこなかったし、
テンジの知り合いNINJAと、カカブが雰囲気似てるなぁ…とか色々あり、
結局初期構想案ではなく、新しく考え直した展開としました。

アルナ&アイリよりサブリナが目立ってしまう懸念もあったものの、
サブリナはあくまでアルナ&アイリ(+テンジ)を動かすきっかけになれば良いな、と
ラストまではそこまで出番のない形にしています。

ここ最近、プライベートで話を書けてなかったのもあり、楽しく書けました。
やっぱ、仕事で書くのとは違いますね。

次はSide:Shadow新章突入?
でもいつ書けるんだろうなぁ…(遠い目)
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コメント

1. NINJAな双子ちゃんも見てみたい

 エクストラ序盤で毎回イルさんに言い寄られてタジタジになるテンジの場面が
結構お気に入りな私です。 行こう、すぐに行こう(若干食い気味に)

 双子ちゃんに手を引かれて両手に花とは、羨ましいの一言に尽きますね!
しかもお泊りした翌日には馬乗りになって起こしてもらえるんでしょう!?(コラ)
そうか、ここがユートピア…!!

 そして深まるサブリナさんの謎。
「綺羅女王」「闇夜のエンターテイナー」が特に気になるところ!
秘密を抱える執事さんやメイドさんのなんとロマン溢れることよ!!

Re:NINJAな双子ちゃんも見てみたい

コメントありがとうございます!
NINJAな双子ちゃん、面白そうだとは思ったんですけどねw

>エクストラ序盤で毎回イルさんに言い寄られてタジタジになるテンジ
お決まりのパターンみたいなのが好きで、このやり取りは繰り返してますw
テンジってポンコツですけど、あまり危機感を表に出すタイプじゃないんですよね。
だけどイルちゃんは明らかに苦手。

>そうか、ここがユートピア…!!
テンジは男なので叶いませんが
ファイさんならば一緒にお風呂とかもあり得るのではないでしょうか。
妄想は夢の翼。

>「綺羅女王」、「闇夜のエンターテイナー」
前者は静かに暮らすために色々爆破していそうな雰囲気がありますね。
後者とスターマインは「本当に何があったのかわからない」感じを狙っています。

サブリナさんとランドルフという
謎の多い2人を絡めた話というのも書きたいような、書きたくないような。

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星七号
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ゲーム作ったり話書いたりする人