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あくまで非公式です

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あの日見た勇姿(非公式レオンSS)

ソグラト砂漠に1人の少年の姿があった。
少年の名は「カンケル」。
カンケルは、ひたすら砂漠を走っていた。

……いや、逃げていると言った方が正しいだろう。
腰に携えた剣を抜く事もなく、必死に多数のデザートウルフから逃げ回っていた。

「どうしてこんな事になったんだ」
「僕の人生は彼らの餌になるためにあったのかな」
などと思いながらも、カンケルは泣きながら、必死で、全力で逃げ回っていた。
しかし、そんな時にカンケルは躓いてしまい、状況は悪化。
倒れたカンケルに向かって、狼たちは今にも飛びかからんとしていた。

その時、カンケルの前に1人の青年が現れた。
青年は2つの刃を持つ短剣を構えると、次々と狼たちに攻撃を浴びせていった。
青年の攻撃を受けた狼たちは、まるで自分よりも大きな獣に出会った犬のような情けない声と共に去っていった。

「大丈夫?」

青年はカンケルに手を差し出し、カンケルはそれを掴んで立ち上がった。

「ありがとうございます……お強いんですね」

カンケルがそう青年に言うと、青年は小さく笑った。

「そうでもないよ。俺より強い人なんて、いくらでもいるからね」

青年は短剣を収めながら、そう言った。

「こんな所でどうしたの?旅行……ってワケでもないと思うけど」
「おじいちゃんにモロクまでおつかいを頼まれてるんです。
 でも、土地勘もなくて、迷子になっちゃって……」
「モロクなら俺の地元だよ。
 嫌じゃないなら案内しようか?」

青年の爽やかな申し出をカンケルは心から喜び、案内してもらう事にした。

「あ、僕、カンケルって言います」
「俺はレオン。
 レオン・ターナー」
「……レオンさんが少し羨ましいです。
 僕、おじいちゃんにいつも「もっと強くなれ」って言われてるんですけど……僕は泣き虫だし、弱虫だし……」

カンケルはそう言いながらうつむいていると、レオンは1冊のノートを取り出しながら口を開いた。

「こういう時は、なんて言うんだったかな……あ、これだ。
 「強さの形は人それぞれ。
  強くなろうとするのなら、まずは自分の強さ、そして弱さを知る事……」じゃないかな」

カンケルは、レオンの言葉に驚いていると、「俺の師匠が言ってた言葉なんだけどね」と笑顔で付け加えた。

「素敵なお師匠さんなんですね」
「そうだね。
 とても遠い所に行っちゃったけど、俺にいくつもの大切か事を教えてくれた人だよ」

少し寂しそうにそう言ったレオンを見て、カンケルは空気を察し、少し気まずく思った。
だがレオンはすぐに笑顔を取り戻し、

「泣き虫でも、弱虫でも、君は君だから。
 あまり自分を責めないで、正直に自分と向き合ってあげてね」

と笑顔で語りかけた。



レオンの案内によってカンケルは無事モロクに到着、おつかいも見事達成出来た。

「ありがとうございます。
 レオンさんがいなかったら、今頃僕は砂漠の中で涙を枯らしていたかもしれません」
「まぁ、力になれたなら良かったよ。
 このまま君の故郷まで送ろうか?」

レオンがそう誘うと、カンケルは首を横に振った。

「いえ……僕も、あなたみたいに頑張ってみようと思うんです。
 結局まだ逃げ回る事になるかもしれないけど、あなたが一緒だと、頼っちゃいそうですから」

頑張って1歩踏み出そうとするカンケルに、レオンはかつての自分の姿が重なったように思え、小さく微笑んだ。

「よし、頑張れ!
 冒険者にとって一番大切なのは、諦めない事!
 俺はいつも、そう信じてるよ」

レオンがそう言うと、レオンの後ろに長身の赤毛の男が立ち、
「良い事言うようになったな、レオン」
と言いながらレオンの髪を掻き乱した。

「サっ、サビクさん!?
 いつモロクに帰ったんですか!?」
「ついさっきだよ。
 久々にお前の顔でも見るかと思ったら、ずいぶんと立派な事を言ってたんでな、思わず感心しちまったワケだ」

サビクと呼ばれた男とレオンは楽しそうにしていた。

「……もしかして、この方がレオンさんのお師匠さんですか?」
「うん、そうだよ」
「でも、さっき遠い所に行ったって……」

カンケルは他界してしまったのだと思い込んでいたため、とても驚いていた。

「うん、モスコビアまで買い出しに行ってくれてたんだ」

レオンの思いもよらぬ言葉に、カンケルは思わず脱力した。

「……レオン、お前、また妙な説明したんじゃねぇだろうな?」

サビクはレオンを鋭い眼光で睨み付けた。

「してませんよ!
 だよね?カンケルくん!?」

レオンはカンケルに訴えかけるが、カンケルは何も言わずに目を反らした。



「それじゃあ、レオンさん、ありがとうございました!」

深々と礼をするカンケル。

「またモロクに来た時はそこの酒場へおいでよ。
 何かご馳走するからさ!」

レオンは頭を押さえながら、サビクと共にカンケルを見送った。



レオン達と別れ、ソグラト砂漠を行くカンケルの前に一匹のデザートウルフが姿を現した。
襲いかかるデザートウルフを前に、カンケルは剣を構えた。

(僕もいつか、レオンさんみたいな強い男になろう……これは、そのための1歩だ!)

カンケルは剣を降り下ろす。
しかし、攻撃は当たらない。
その隙を突くようにデザートウルフはカンケルを引っ掻いた。

「ッ……!?」

カンケルは慌てて逃げ回るが、デザートウルフはそれを追いかける。
いつの間にか剣も落としてしまい、必死で逃げ回っているカンケルの前に、青年が現れた。

「1歩踏み出した事。
 今回はそれで充分じゃない?」

青年……レオンは短剣を巧みに扱い、デザートウルフを退けた。

「やっぱり、送るよ」

カンケルは情けないと思いつつも、結局レオンの世話になる事にした。

いつかレオンのように強くなりたい。
カンケルは、そう思いながら故郷への道をレオンと歩んでいくのだった。

かつてサビクに憧れた少年レオンは、カンケルという少年に憧れられるほどの男に成長していた。
レオンを諦めず、前進させたのは間違いなく、かつて見たサビクの勇姿を忘れられなかったからだろう。

そして、カンケルもまたレオンの勇姿を忘れずに励み続けるのだが……それはまた、別の物語で。



(後書き)
これは去年のレオンの誕生日(7月18日)に先駆けて5月にかいたものです。
かなりフライングしましたが、実はS.S.S.実装当時から、いつか成長したレオンを描きたいという気持ちがあったので、非公式ではありますが、俺が思う5年後のレオン(21歳)の姿を描こう!と思い立ったら筆がノってしまいましてw

コンセプトは「5年間で変わったものと変わらないもの」。

まず、分かりやすい部分として一人称が僕から俺に変化してますね。
これは「憧れていただけの少年」から「自分の力で他者を助けられるようになった」という状況・心境の変化が影響しています。
自信をつけたというのもありますし、いつもサビクに付きっきりではなくなりましたからね。

ただ、性格は変わらずお調子者な面が残ってたり、サビクを神聖視しているのはあまり変わりません。
サビクさん名言集ノートを持ち歩き、使えそうな所では引用するあたりはまだまだ子供っぽさが抜けてませんね。

武器が「スレイヤー(店売り)」から、短剣「モノマキア・ラミナ」に変わりました。
かつてサビクが愛用していたものを18歳の誕生日に貰ったという脳内設定です。

元々身長が低く(牛乳飲まないから…?)、武器に振り回されがちなレオンに両手剣(大剣)は相性が悪かったんです。
そのため、サビクは何度かレオンでも扱いやすいであろう短剣を奨めていたのですが、レオンは「このスレイヤーの方が格好良い」と意地を張り続けた。
結果、サビクの愛用武器をもらえて、「これなら使いたい!」という展開が(星七号の脳内で)ありました。
サビクは代わりに新たな短剣をルファクの武器コレクションの中から貰い、それを使ってます。

たぶん皆さん気になる「サビクさん(32歳)」ですが、どこに住んでいるのか、何をしているのかは今の所あえて設定を定めていません。
だって、女性PCと結婚してて欲しい人もレテーナと結婚してて欲しい人も永遠の独り身でいて欲しい人も(?)いるじゃないですかw
とはいえ、毎日のようにはレオンと会ってない事、それでも決して疎遠になったワケじゃない事は台詞から察していただけると思います。

かつてレオンの肩書きは「未来の英雄?」にしましたが、まだ「英雄」になれたかと言うと怪しいです。
でも、カンケルには希望を与えられた。
カンケルという個人規模では英雄なのかもしれません。

ちなみにカンケルの名は「キャンサー(蟹座)」から。
レオンの名前は獅子座ですから、それに合わせて。
誕生日的にレオンは蟹座なので、新キャラはカンケルにw
カンケルはきっと獅子座だw

ちなみにレオン20歳の誕生日には例の酒場で誕生パーティーをやったんじゃないでしょうか。
レオンは弱い酒一杯で顔真赤にしそうですけどねw
たぶん、お酒の入ったチョコレートで充分w

レオンの誕生秘話(?)に関してお話しすると、Side:サビクの中心であるサビクが物語の主人公として王道ではない分、サブ主人公に王道風キャラを置いたパターンです。
自分が書く話はこういうパターンが結構あります。
でも、レオンはあくまでSide:サビクの主要人物であり、S.S.S.全体でのメインキャラクターではないので、どこか凡庸なイメージも持たせています。
よくいえば、未熟な分伸びしろがあるといいますか。

今回のSSの後も、レオンはきっと成長をやめないでしょう。
いつか、本当に英雄になれたらいいですね。

7月18日の誕生花はマリーゴールド。
花言葉は当初意識していた「勇者」、「悪を挫く」というものの他に「嫉妬」、「悲哀」、「絶望」というのもあるそうです。
レオンにはあまりネガティブな感情の印象がないのですが、長い人生の中でレオンの暗黒面が目を覚ます話も膨らませられそうな気はしますw
とはいえ、レオンはレオンのままでいるのが一番かな?w

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星七号
職業:
ゲーム作ったり話書いたりする人