ある夏の日。
剣の素振りで汗だくになっていたレオンはその汗を拭きながらサビクに質問した。
「そういえばサビクさんの誕生日っていつなんですか?」
木陰にいたサビクはレオンの顔を見ながら「どうした急に?」と質問に質問で返した。
「この間、僕の誕生日を祝ってくれたじゃないですか。
だからサビクさんの誕生日もお祝いしたいんですけど、そういえば聞いてなかったなって!」
サビクは何かを思いながら頭をかき、そして空を見上げながらつぶやいた。
「誕生日……か……」
サビクのつぶやきを不思議に思うレオンだが、サビクは「今日はここまでだ」とだけ言い残して、その場を去っていった。
サビクは小さな花束を持って、ある丘を訪れていた。
数年前、死んでいった兄弟たちに墓はない。
サビクらは生き残った兄弟であるスピカやルファクらと、ここを墓代わりにしていた。
花束を置いたサビクは、死んでいった兄弟たちを想いながら、小さくつぶやいた。
「誕生日……誰1人そんなものを祝ってやった事もなかったな……」
施設の実験体であるサビクらは過去の記憶を封印されているものが多く、施設に来る前の自分を知らない者がほとんどだった。
故に、誰かの誕生日を祝うという習慣も存在しなかったのだ。
「生まれは祝福出来ねぇが、死だけは悼む……寂しいよな、こんなの」
「……自分に出来る事をしているだけだろう」
サビクは独り言をつぶやいているつもりだったが、急な声に思わず驚いた。
振り返るとそこには、小さな花束を持ったルファクの姿があった。
「……なんだ、ルファク。
聞いてたのかよ」
「あぁ……
確かに俺たちに誕生日はない。
だが、アルナとアイリは、ジェメリー家に養子入りした日を誕生日としている」
ルファクの意外な言葉にサビクは驚いた。
「……そうか、あいつらには誕生日があったのか……知らなかったな」
「ないなら作れば良いだけの事だ。
自分が生まれ、生きている事を噛み締めるための、1つの節目としての日を」
ある夏の日。
モロクにある小さな酒場に、人々が集まっていた。
「せ~の!
サビクさん、お誕生日おめでとうございま~す!」
レオンはクラッカーを鳴らし、スピカはサビクに花束を渡した。
アルゴル、アルナ、アイリ、ルファク、レテーナ……次々とサビクに関わりを持つ者たちからプレゼントが渡されていく。
珍しく照れた顔を見せたサビクに、一同には笑顔が溢れた。
今日は1年前、サビクがもう一度歩き出した日だった。
ないなら作れば良いと言われたものの、どうして良いかわからなかったサビクに、事情を知ったレオンが「じゃあこの日を誕生日にしましょう!」と言い出し、サビクを知る者たちに声をかけたのだ。
「みんな……ありがとな」
サビクは、自分が生きている事を初めてみんなが祝福してくれる……それが嬉しかった。
過ぎた時と死んだ者はかえってこない。
悲しい事に、どうやっても変えられない現実だ。
だからこそ、自分たちは命ある限り生きていく。
失った者たちの分まで、強く生きていく。
それを改めて決意するサビクだった。
(後書き)
これは去年サビクの誕生日(8/6)に合わせて直前の土日に書いたSSです。
タイトルを含めて、「夜明け前の空の下で」の後日談的意味合いが強いですね。
絶望していたサビクのその後と想い、を中心にしています。
レオンの「あの日見た勇姿」とは異なり、S.S.S. Final Episode後1年以内のイメージです。
実際Side:サビクのリリースは10月でしたが、サビクは夏男なので設定上、Side:サビクの話は夏の出来事だろう!というつもりで書きました。
まぁ、S.S.S.自体オムニバス形式なのでいつの時期という厳密な描写はないですが。
どうしても気になる方はサビクがモロクに初めてやって来た日に脳内変換してくださいw
どっちにするか悩んでたのでw
公式サイトに誕生日の設定を載せなかった理由について、この非公式な場であえて何とは公表しませんが、このSSを読んでいただけた方なら察しがつくかもしれません。
「かつては勇者と呼ばれる程に強く、周囲にも慕われていたのに、ある出来事をきっかけに、立ち直れないほど心に傷を負い、全てを諦めてしまった…」
連続する物語「S.S.S.」を書くにあたって、真っ先に思い付いたのはこんな感じの年長者キャラでした。
その構想からRPGでよくある「パーティー年長者枠」を目指して手を入れたのがサビクですね。
そういう意味ではS.S.S.で一番長い付き合いのキャラクターです。
当時のROのプレイユーザー層を考え、もう少し年齢を上げるかも悩んだ部分ですが、S.S.S.の裏テーマでもある「(擬似)兄弟」というイメージから最年少組と親子ほど年齢を離したくなかったため、あくまで20代にしています。
8月6日の誕生花、「ジニア」の花言葉は「別れた友への想い」なんですが、サビクの設定的には友ではなく家族、兄弟ですね。
苗字の「モルス」も死という意味がありますし、生死に関してすごく関わりの強いというか、切り離せないキャラクターです。
それもあってサビクさんはいつもシリアス目に書いちゃうんですよ。
意外と女性人気という話を踏まえ、今日はサビクの恋愛面に関して踏み込んで考えちゃいましょう。
元々は女好きっぽい設定があったサビクですが、いざ良い空気になるとウブな面が見えてくる…そんな風に思えたりします。
まぁ、本編ではそういうシーンないので気のせいかもしれませんけどw
酔えないのに酒を飲み続け、酔っぱらいを演じ続けたような男なので、サビクは基本的に嘘つきだと思うんです。
だから、ふとした時にその嘘の面が剥がれるんじゃないかと俺は思います。
お色気攻撃とかも意外に弱いかもしれませんw
自分の上着を脱いでかけてくれるサビクの姿は安易に想像出来ますしw
…あ、でもレテーナとか普段から結構露出してましたっけw
サビクさんのグローブにはトゲトゲがあるのでサビクパンチはかなり痛いと思うんですが、ブーツにもあるんですよね、同じトゲトゲが。
必殺! サビクパンチ! サビクキック!
「兄さんは私たちのヒーローだった」
…これはそういう意味…ではないですね、きっとw
1. 祝・サイト開設!!
是非お祝いの言葉を残しておきたいと思いまして。
このタイトルじゃデパートか何かの開店祝いだ…orz
早速全SSを拝見致しまして、溢れ出るキャラ愛を
なんとか飲み込んでコメントを打っております。
一つ一つに長い感想を添えたいのは山々なのですが、
初っ端からいきなりは流石にご迷惑だろうと、
滅多に機能しない自制心を働かせています。
サビクさん嘘吐きかぁ… 素直じゃないなぁヘッヘッヘw
物語を進める中で抱いた勝手なイメージですが、
彼はルファクとはまた違った不器用さを持っていそうです。
ゲームに限ったことではないのですが、
年長キャラ、長男長女というのは甘え下手が多いらしいですね。
もっとプレイヤーに甘えてくれてもいいんだぜ(キリッ
記事の最後にいるドット絵の皆が可愛いw
あ、今レトロゲーム風のドット絵でSSSという妄想が
脳内を駆け巡り始めたので今夜は眠れませんね(諦)
これからも更新を楽しみにしております!
Re:祝・サイト開設!!
自制も時と場合によっては必要ですが、ここはオープンにしていただいて全然構いませんよw
そういうのがあった方が嬉しいですから!w
サビクさんは甘え慣れしてなそうですねー。
もし仮に1日プレイヤーを兄or姉と思って甘えて良いよ!という超展開になっても
染み付いた兄貴思考から甘える事もないまま途中でレオンあたりに泣きつかれて
「やっぱこっちのが気が楽だ」
とか言ってる気がしますw
ドット絵はむかーし携帯の絵文字として作ったものを調整したものです。
ハイクオリティドットの良さももちろんありますが、個人的にはこういう限られたドット数の世界も好きです。
…まぁ、ここで公開したのは自分に絵を描くスキルがないからなんですがw