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Side:Shadow 0「忘却ノ青年」


 Strong Stars Story
  Side:Shadow
   0「忘却ノ青年」




最後に食事をしてから……どれぐらいの時間が経っただろうか……
もはや、食事をする金すらもなくなった俺は、空腹のあまり、今にも倒れそうだった。

こんな事になるなら、重い荷物でしかないこの刀を売り払っておくべきだったか……
俺は過ぎた過去を虚しく嘆きながら、その場に倒れた。


「……大丈夫かい?」

俺に優しげな声で1人の男が話しかけてきた。
とても、あたたかい声だった。

「……腹が……減った……」

俺の言葉を聞くと、男は一度その場を離れ、すぐに戻ってきた。

「……おにぎり、食べるかい?」

俺は男の好意に甘え、久しぶりの食事にありついた。

「ここじゃ落ち着かないだろう?
 近くで店をやってるんだ。
 開店前だが、店で食べるといい」

「……嬉しい申し出だが、見ての通りだ……金はないぞ……」
「気にしなくて良いよ、これはただのおせっかいなんだから」

「……すまない」





「ようこそ、「デイブレイク」へ」

男は俺を席に座らせると、そう言って微笑んだ。

「俺はランドルフ、ここの店主さ。
 ……アンタは?」
「……テンジ……職はない」

俺がそう名乗ると、ランドルフと名乗った男は小さく笑った。

「ははっ、すまない。
 ……立派な武器を持ってるから、てっきり冒険者なのかと思ったよ。
 実は俺も、元冒険者でね」

ランドルフはそう言いながら簡単ないくつかの料理を作り、俺に振る舞ってくれた。

「さぁ、食べな。
 遠慮はいらないよ」

俺はランドルフの好意に甘え、ご馳走になった。
ランドルフの味は、家庭的……とでも言えば良いのだろうか。
心があたたかくなるような味がした。

「……冒険者か……
 確かに旅はしているが、冒険者と言えるほど、大したモンじゃない」
「旅をしてるなら、冒険者で良いじゃないか」
「……そういうものか……?」
「そういうものさ」

俺とランドルフがそんな話をしていると、ランドルフは不思議と笑っていた。

「……どうかしたのか?」
「実は、少し前にこの店の前で倒れてた若者がいたんだ。
 俺の周りにはそういう人間が寄ってきやすいのかと思ってね」
「……そいつは今、どうしてるんだ?」

俺がそう質問すると、ランドルフはやや話しづらそうに口を開いた。

「……実は、どうも記憶喪失みたいでね……
 怪我も酷いし、しばらくはこの店の奥で看病する事にしたんだ」
「……そうか。
 だがそれにしても……アンタ、ずいぶんお人好しなんだな」

俺にそう言われ、ランドルフは満足そうに微笑んだ。

「言ったろ、元冒険者だって。
 冒険者なんて大体そんなもんさ」

「……なら、俺も何かアンタを手伝おう。
 ……冒険者としてな」

俺がそう言って小さく笑うと、ランドルフは満面の笑みを見せた。

「それなら、アルゴル……
 さっき話した、記憶喪失の若者の話し相手になってくれるかな。
 俺は店の仕事もあるし、あまり相手してやれないからさ。
 アンタなら、面白い話もしてやれそうだ」

俺は、ランドルフに案内され、店の奥へと向かっていった。





案内された部屋では、ベッドの上で、白髪の青年が本を読んでいた。

「アルゴル、今大丈夫かい?」

ランドルフがそう声をかけると、アルゴルと呼ばれた青年は本を閉じ、こちらを向いた。

「どうかしたんですか?」

アルゴルというおとなしそうな青年が、こちらに微笑みかけてきた。

「紹介するよ、冒険者のテンジだ。
 なかなか面白い男だから、話し相手になるかと思ってね」

ランドルフがそう伝えると、
アルゴルは少し申し訳なさそうに、それでもどこか嬉しそうに微笑んだ。
よほど、退屈しているのかもしれない。

ランドルフはアルゴルの様子を見届け、嬉しそうに店の方へと戻っていった。

「はじめまして、ボクはアルゴル……
 アルゴル・シーラです」
「俺はテンジ……冒険者、見習いだ」

俺の自己紹介を聞いてアルゴルが小さく笑った。

「……ご、ごめんなさい。
 旅慣れてそうだし、見習いっていうのが意外だったから……」
「気にするな。
 ……ついさっき、冒険者になったばかりだからな」

そんな会話をしていると、机の上に置かれていた何かが、床へと転がり落ちた。
転がり落ちた……水晶玉のようなものは、一瞬だけ、光り輝いたように見えた。

「……ッ……!?」

その時、アルゴルはいきなり苦しみ始め、自らの掌を見つめた。

「おい、大丈夫か!?」

俺は慌ててアルゴルに駆け寄った。
アルゴルは震えながら、荒い呼吸のまま、なんとか笑顔を作っていた。

「……大丈夫、いつもの事、だから……
 時々、痛むんだ……身体中の傷が……」

俺は、ランドルフがアルゴルは「怪我が酷い」と言っていた事を思い出した。
それにしても発作のように急に痛みを感じるのは気になるが……
何か、アルゴルの失った過去と関係があるのだろうか。

「……本当に大丈夫か……?」
「……」

アルゴルは何も言わずに、黙り込んでしまった。
ぼんやりと自らの掌を見つめ、アルゴルは衣服の首元を緩めながら、静かに語り始めた。

「……ボクはね、記憶がないんだ。
 自分がアルゴルっていう名前なのかすら、確証が持てない。
 何もわからない……わからないんだ……」

アルゴルは天井を見上げた。

「だけど、痛みと共に、今、少しだけ思い出した事がある……
 ボクは……強くならなきゃいけなかった……
 理由はわからないけど、「強き者」たちに会わなくちゃいけなかったんだ……」

アルゴルは静かに、ゆっくりと、俺に語り続けた。

「……強き者たち……その強き力こそが、ボクの記憶の鍵になる……
 強き者の……強き、力……」

アルゴルがそう呟いていると、
先ほど床に落ちた水晶玉のようなものが、うっすらと青く光った。
その瞬間、俺の頭の中に、港街にいる青い髪の少女のイメージが浮かんだ。

「……?
 なんだ、今の女は……?」

俺が不思議な感覚に戸惑っていると、
アルゴルは「キミにも見えたの?」と目を丸くして問いかけてきた。

「あぁ」
「……今のが、強き者の1人……
 「完全無欠の冒険者」……だと、思う……
 ……会わなきゃ……彼女が持つ力を、確かめなくちゃ……」

アルゴルが何を言っているのか、俺にはまるで理解出来なかった。
だが、真剣な眼差しで何かを考えているアルゴルを、何故か俺は放っておけなかった。

「……アルゴル、今のお前がまともに出歩けるとは思えない。
 ……お前の代わりに、俺に出来る事はないのか?」

俺の言葉に、アルゴルは驚いていた。

「ど、どうしてキミが……?」

「……さっき、ランドルフに飯を食わせてもらった。
 ランドルフは俺に、お前の話し相手になるよう言っていた。
 ……そんなお前の頼みを聞くのは、おかしな事じゃないハズだ」

「テンジ……さん……」

「それに……

 冒険者ってのは、お人好しなモン、らしいからな」

俺がそう言って小さく笑うと、アルゴルも笑顔を取り戻した。



後になって思い返せば、これが全ての始まりだったのだろう。


これは、星と星を繋いでいく、星の絆の物語。



(星七号の独り言)
と、いうワケでいきなり始まった
「Strong Stars Story Side:Shadow」。
これは本家S.S.S.とは完全にパラレルな、影のS.S.S.です。

特に本家S.S.S.を否定するような意図は一切なく、
この作品のコンセプトは「ゼロからもう一度S.S.S.を楽しむ事」です。
なので、この話は第1話ではなく、第0話なんです。
もう一度あの頃の自分と向き合い、あの頃とは違う形を目指してみたいなと思っています。

パラレルなので、本家S.S.S.とは異なる部分ももちろん出てきます。
本家S.S.S.の方が好きだったのに、余計な真似するなよ!
という方も、もしかしたらいるかもしれない。
ですが、これはこれとして、新鮮な気持ちで「もう一度楽しんで」いただけたら幸せです。

「うすしお」だった作品が、今度は「のりしお」になるのか、
もしかしたら「コンソメ」や「ガーリック」になってるかもしれない。
ROとも切り離した媒体なので、RO未プレイの方でもお楽しみいただけるかと思います。

ゲームシナリオとは違い、SSの形式なのでやりにくい部分も多々ありますが、
それぞれのキャラクターのゲームではあまり見えなかった
内側なども、描ければ…とは思っています。
(しっかり描ける技量があるとは言っていない)


ちなみにSS形式ではなく、同人ゲーム化も考えました。
nScripterとか、ティラノスクリプトとか、RPGツクールとかを使って。
ゲーム大好きなので。

ただ、どうしても話を書く以外の時間が必要になってしまい、更新ペースが落ちる事、
キャラグラフィック、背景、BGMなどはどうする? という問題、
その他にも色々あって、ひとまずはこの形で公開しております。

ゲーム化は…いつか、余裕があれば。


はてさて、今回主人公を務める「テンジ」ですが、
実は彼、S.S.S.初期から設定のあったキャラクターです。
もしもS.S.S.がゲーム外でも何かしらの展開をする事になれば、
彼が主人公代理として登場する予定でした。

…が、ご存知の通り、実際にはそんな機会もなく、彼は未登場のままS.S.S.が完結。
さらに勝手に妄想していた別の形で再利用も試みたものの、やはり機会に恵まれず。
ようやく今回皆様の前に登場する形となりました。
7年かかったね。


Side:Shadowは基本的に不定期連載を予定しています。
仕事ではないので、色々と余裕がある時や、
何かの合間に書く形となってしまいますが、どうぞよろしくお願い致します。
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コメント

1. また垂涎モノの作品が拝めるのか…!

 涎が止まらないんですがどうしてくれるんですか!?(ぇ)
もうすぐ暖かくなってくるので、全裸待機だって怖くない!!(バッ)

 冒険者は、やはり旅好きでお人好しなのが最もそれっぽいと思ってしまいます。
たとえ素寒貧で、空腹で行き倒れたとしても冒険者あるあるですからね(オイ)
 テンジさんのプロフィールなども気になるところです。
刀使い? 名前は? 歳は? エトセトラエトセトラ…
もしや、S.S.S.メンバーも噂の初期設定となっているのでしょうか?
 wktkぶりを発揮して先生のハードルを上げる鬼畜の所業…
ともあれ、続きを楽しみにお待ちしております!|ω‘ *))

Re:また垂涎モノの作品が拝めるのか…!

コメントありがとうございます!

>涎が止まらないんですが
ランドルフ「何か食べていくかい?(にっこり)」

>テンジさんのプロフィール
実は用意してあるのですが、もう少しテンジの素性が見えてきてから公開するつもりでいます。
とはいえ、読む際にイメージしやすいように、ざっくりお答えすると

>刀使い?
刀を持っているようです。
ただし、本人いわく「重い荷物」。

>名前は?
今のところテンジとしか名乗っていませんね。
「展示」や「点字」ではないそうですw

>歳は?
アルゴル以上、サビク以下です。

>もしや、S.S.S.メンバーも噂の初期設定と
さて、どうでしょう…? お楽しみに!

>ハードルを上げる鬼畜の所業…
不定期ですから!
その気になれば10年後、20年後…まで自分が生きているかはわかりませんが、
そんな事にならないように、なるべく頑張ります。
が、仕事ではないのでペースは期待しないでくださいw

プロフィール

HN:
星七号
職業:
ゲーム作ったり話書いたりする人