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Side:Shadow 13「疑惑」


Strong Stars Story
  Side:Shadow
   13「疑惑」
翌日。
砂漠の街にある安宿を出た俺は、
身の丈に合わぬ剣で熱心に素振りに励むレオンを目撃した。

……お世辞にも様になっているとは言えない状態だが、
熱心に頑張っている事だけは伝わってきた。

「あ、テンジさん!」

レオンもこちらに気付いたようで、武器を下ろしてにこやかに手を振っていた。

「おはようございます!
 今日も良い朝ですねっ!」

レオンの笑顔は、相変わらず太陽のように眩しかった。
この無邪気な眩しさがサビクを遠ざけているようにも思えるが……
それを考えないのもまた、レオンらしさなのだろう。

「そうだ、これから朝ごはん一緒にどうですか?
 サビクさんはまだ寝てるでしょうけど、姉さんも誘って!」

特に断る理由が見当たらない俺は、レオンと共にフォルトゥナへと向かった。





フォルトゥナの近くには、何故か人だかりが出来ていた。
それを避けながら店の前へと向かうと、暗い表情のレナの姿があった。

「姉さん、どうしたの?
 何かあった?」

レオンの問いを受け、レナは静かに口を開いた。

「……実は……昨日の売上金が盗まれたのよ」
「えぇっ!?」

レナの衝撃的な言葉に、レオンは驚きを隠しきれない様子だった。

「……だっ、大丈夫なの……?」
「全財産を盗まれたワケではないし、
 被害額は……まぁ、全く影響がないワケじゃないけど、
 激しく絶望するほどのものでもないわ」

レナの話を聞き、レオンは「そっか」と思わず安堵の息をついていた。

「……でもね、気になるのはここから先の話。
 赤毛で頬に傷のある男が、
 閉店後に店の前で怪しい動きをしていたらしいの」

赤毛で頬に傷のある男……
この情報だけで、俺は無意識のうちにサビクの事を思い浮かべてしまっていた。
恐らくこの話をするレナも、話を聞くレオンも同じなのだろう。

「……嘘だっ!!
 サビクさんがそんな事、するもんかっ!!」

レオンは大声でレナの話を、そして無意識のうちに頭に浮かぶ疑惑を否定した。

「……私だって、信じてるワケじゃない。
 だけど……」

レナは何も言わずに目を伏せた。

サビクの素行を知っているからこそ、
レナはハッキリと否定出来ずにいるのだろうか。

「……レナやレオンは昨夜、何か見ていないのか?」

「レオンはいつも早めに上がらせてるし、
 昨日はそれほどお客さんも多くなかったから、
 叔父さんが私もレオンと一緒に上がらせてくれたの……だから何も……」

……冷静に考えてみれば、妙な話ではある。

サビクは店の用心棒だ。
その気があれば、もっと怪しまれずに、より多くの額を盗む機会もあるのではないだろうか。

まだ、結論を出すには、情報が足りない……

俺がそんな事を考えていると、「いたぞ、サビクだ!」という声が聞こえてきた。

人の波を掻き分けながら、若い男達に連れられてサビクが歩いてきた。

「だッ……なんなんだ、お前らッ!!
 俺が何をしたってェんだよッ!?」

事態が飲み込めずにいるサビクの衣服から若い男が財布を抜き出した。

「てめェ!
 何しやがるッ!?」
「やっぱりだ……!
 大金が入ってるぞ!!
 この金が何よりの証拠だ!!」

サビクは不快感を隠しきれない表情のまま、強く頭をかいていた。

「俺の財布だ、返せ!!」

サビクが強引に財布を取り戻そうとするが、
男達はサビクの体を押さえつけ、身動きを許さなかった。

「サビク……本当に、あなたが……?」

レナは悲しそうに、そう問いかけた。

「だから、何の話だよッ!?
 ちゃんと説明しろッ!!」

そう言ってサビクは怒鳴るが、
「じゃあ、この金はなんなんだ!?」
と男達は強引に、サビクを犯人に仕立てあげようとしていた。

「待ってください!
 サビクさんは絶対にやってません!」

レオンは必死でサビクの無実を主張するが、男達はそれを聞き入れる気配はない。

まるで話が進まないこの状況を解決するため、
俺は閉ざしていた口を開いた。

「……決めつけからかかっても話は進まん。
 少し、落ち着いて話さないか……?」





開店前のフォルトゥナで、
不機嫌な表情のサビクに対し、レナと街の男達は、起こった事を順序立てて説明した。
サビクは納得のいかない空気を漂わせながら、舌打ちをしていた。

「……それで、俺が犯人に仕立てあげられたワケか」

サビクは不満たっぷりにそう言い放った。

「……チッ……くだらねェ……」

重々しい空気の中、そうサビクは呟いた。

「……本当の事を話して、サビク……」

サビクに向かって、レナがそう言うと
サビクは財布の中に入っていた所持金を目の前のテーブルに叩きつけた。

「……犯人は俺だ、そう言えば満足か?
 金ならやるぜ……あばよ」

サビクは怒りを必死に堪えたような口調で、そう言い放って立ち上がった。

「なんでそんな嘘つくんですかっ!?
 サビクさんはやってない!!
 そうでしょう!?」

レオンはサビク以上に感情的に、
納得がいかない想いを正直に、精一杯サビクへとぶつけていた。

「言ってください!
 俺じゃない、って!!」

レオンは必死に想いをぶつけた。
だが、サビクが返したのは、レオンが望むような返答ではなかった。

「レオン……知った風な口を利くんじゃねェ……
 お前に俺の何がわかるんだ?」

冷たい口調でそう言い放ったサビクは、そのままフォルトゥナを飛び出していった。


「サビク……」
「サビクさん……」

レナも、レオンも、感情を抑えられずに涙を浮かべていた。

一方、男達は口を揃えて
「やっぱりサビクが犯人だった」「いつかはやると思ってた」
というような会話をしていた。

……このまま、無罪である可能性を否定出来ないサビクを
放っておくワケにもいかないだろう。

俺は1人、サビクの後を追いかけた。



(星七号の独り言)
サビク編の主要キャラ紹介と状況説明も落ち着き、次のステップに突入しました。 
このステップは雨季のようなもので、モヤモヤされるかもしれませんが…
というか、自分自身書いててスッキリしないものがあります。

早く先の展開を書きたい気持ちを抑えつつ、1話1話を大切に書いていけるよう頑張ります。
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星七号
職業:
ゲーム作ったり話書いたりする人