Side：Shadow 18「隠された毒牙」

「これで終わりにするか？
　……それとも、もっと壊してほしいのか？」

ブラック兄弟の親玉はひきつったような表情でサビクを見ていた。

下っ端たちの中には慌てて逃げ出す者もいたが、親玉が
「何をしている!?
　オメェらも戦え!!」
と指示を出すと、それぞれ武器を構え、レオンに向かって攻撃を仕掛けてきた。

「……ッ!?」

恐らく、レオンならば倒せるという考えがあってのものだろうが、
俺もレオンを傷付けさせるワケにはいかない。
向かって来る者に次々と打撃を与え、戦力を削いでいった。

その間にもサビクは親玉の目の前まで近付いており、
短剣の刃を無言で突きつけていた。


「……キッ……キキキッ……」

刃を突きつけられた親玉は、下卑た笑みを浮かべていた。

「……気でもふれたか？」

サビクの言葉を聞き流しつつも、
親玉は服の内側から、どこかで見たような謎の水薬を取り出した。

この水薬……まさか……

親玉は勢い良くそれを飲み干し、恐ろしくも品の悪い笑みを浮かべてみせた。

「キキキッ！　キキキキァッ！
　キッ！　キキキッキッキキァァァッ！」

俺は目の前の男に、いつか戦った
デリテリオの一員「ニードラ」と似た気配を感じていた。
やはりあの水薬は……あの時と同じものなのか……？

親玉は銃を構え、サビクに向けて発砲した。
サビクはその弾道を見切り、短剣で切り払ったが、その間に親玉は
レオンに目掛けて更なる弾丸を放っていたため、俺はその弾丸を「天狼」で斬り払った。

「すっ、すごい……！
　2人とも銃弾を切り払うなんて……!!」

レオンはそう言っていたが、俺達にはレオンという
「傷付けたくない存在」がいる以上、この戦いは長引かせるワケにはいかない。
ニードラの時のように同時攻撃を仕掛けるしかないだろう。

「……サビク……この戦い、すぐに終わらせるぞ」
「あぁ……ハナからそのつもりだ」

サビクは俺の考えを理解したのか、静かに頷いた。

サビクは影に溶け込むように、その場から姿を消し、
俺は同時に全速力で親玉へと接近した。

「……ハァッ!!」
「斬ッ!!」

前方からの俺の抜刀術と、後方にいきなり現れたサビクの斬撃を同時に受け、
親玉は負傷し、片膝をついたが、その表情は相変わらず笑みを浮かべていた。

「キキキッ……サァビク……
　これで勝ったと思うなよ……？」

親玉が指を鳴らすと、激しい振動と共にどこからか爆発音が聞こえてきた。

「……ッ!?
　なんだ、今のは……？」

「俺は……ブラック兄弟のボス……
　そして、“デリテリオ”の新たな幹部となる男……クラーク・ブラック……

　キキキキキッ……
　“毒蛇”の名にかけて、狙った獲物はタダじゃあ帰さねェ……!!」

親玉は再び指を鳴らした。
先程と同じように、激しい振動と爆発音が響き渡った。

「テメェ、何をしてやがるッ!?」

「わからないのか、サァビク……？
　……わからないよなァ……？

　このアジトを処分してるんだ。
　5回の爆発で、全てが消し飛ぶよう仕込んである……

　さぁ、思い出せ、別室に何があるのかを……!!
　お前達が、このアジトに、何をしに来たのかをォ!!」

親玉……クラークはそう言いながら、指を鳴らした。

「レナァッ!?」
「姉さんっ!?」

「キッキキ……キァァァ!!
　俺のモノにならないなら、生かして帰す必要はねェ!!
　役立たずのサァビクを恨んだまま、死んで行けェ!!」

クラークが指を鳴らそうとした瞬間、
サビクは短剣を構えたまま、全力でクラークの顔面へと殴りかかった。
クラークは勢いよく倒れ、サビクは馬乗りの状態でその首へ刃を突きつけた。

「悪いが死ぬのはテメェ1人だ。
　俺の仲間は……もう、誰も死なせねェ……!!」

サビクがクラークの首を断ち切ろうとした瞬間、俺達の背後から笑い声が聞こえた。
クラークのものでもなければ、当然俺やサビク、レオンでもない。

光に包まれ、消えていくクラークと入れ替わるように、
見覚えのない女が俺達の前に立っていた。



(星七号の独り言)
クラークがデリテリオ関係だとお気付きでしたか？
名前に「ー」があるだけでなく、ヴァイパーと蛇の名を冠した兵器を使ったり…
と思いましたが、Side：Shadow単体で見ると「蛇」のヒントがほぼない事に今気付きました(汗)。

ナガサーの肩書きが「毒蛇たちの主」、ナガサーの名前の由来は「ナーガ」から、
デリテリオの由来は「ディリティリオ(毒)」と蛇関連でまとまっています。
ナガサーの好きな食物はゆで卵(蛇といえば卵)です。

サビク編ももうすぐ終わります。
最後まで頑張るよー！