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Side:Shadow 23「兄」


Strong Stars Story
  Side:Shadow
   23「兄」


……見つけた。

あたしは、脇目も振らず、人混みも気にせず、
ついさっき見かけた人の背中を追いかけた。

あたしが見まちがえるハズがない。
あれは……ゼッタイに『お兄ちゃん』だ!
まちがいないよ……!

「お兄ちゃん……!
 待って……あたし……っ……!」

なんとか『お兄ちゃん』に追い付こうとあたしは必死だった……
けど、このドレスは動きにくいし、人混みの中で動きにくいし……
結局、あたしは『お兄ちゃん』を見失っちゃった……

『お兄ちゃん』……いったいどこで何をしてるんだろう。
……どうして、あたしたちに会いにきてくれないんだろう。

「お兄ちゃん……」

あたしは、うつむきながらそうつぶやいた。

……すると、知らない男があたしにハンカチを差し出してきた。

「どーしたのさ、オジョーサン?
 涙はキミに似合わないよ?」

知らない男は、キザなセリフを話しながら、気取ったように笑っていた。
あたしは、なんだかスゴくムカついた。
こういうヤツって、なんでかわからないけどムカついて仕方ない。

「……泣いてないし、ほっといてよ」

そう言って、その場から離れようとしたけど、
男はあたしの右手をつかんで放さなかった。

「フフンッフン?
 そうはいかないよ、オジョーサン?
 キミにはホラ……ボクにお小遣いをくれるお仕事があるんだから」

男はムカつく笑顔を見せながら、あたしに小さなナイフを突きつけた。

あー……またか……

『お嬢様』をやってるとこういう事は少なくない。
イイヒトのフリをして近付く悪人を、1年でどれだけ見たっけ……数えるのもバカらしい。
特にあたしは、アルナとちがって1人になる機会も多いし。

だけど、だからと言って泣いて助けを求めるあたしでもない。
なんかムカつくし、ちょっとぐらいイタい目見せちゃおうかな?
あたしがその気になれば、こんな男ぐらいどうにでもなるし。

そんな事をあたしが考えていた時だった。

「……放せ」

どこからか、声が聞こえた。

「アイリ、動くな……ッ!!」

影のように素早く現れた誰かが、一撃で男を倒れさせた。
男は気を失ってるみたいだった。
手に持っていたナイフは何度か回転して、男の顔のすぐそばに突き刺さっていた。

「……お兄ちゃん……っ……!!」

あたしは、思いっきりあたしを助けてくれた『影』に抱きついた。

「俺は……別に、おじさんでも構わないが……」

『影』は、少し困ったようにあたしに話しかけていた。
ゆっくりと見上げると、あたしが抱きついていたのは、
『お兄ちゃん』じゃなく、テンジというあの冒険者だった。





『お兄ちゃん』……か。
懐かしい響きだ。
俺にもかつて、そう呼ばれた頃があった。

……いや……俺には、『あの頃』を懐かしむ資格はない……

……俺は……罪深き男なのだから……

「……もう、アイちゃんったら……心配したんだよ?」

俺が考え事をしている間に、物陰に隠れさせていたアルナが、
困ったようにアイリへ駆け寄り、話しかけた。

「今回はテンジさんがいたからよかったけど……
 世の中には、怖い事がいっぱいあるんだから……ね?」

「……べつに、あたし1人でもダイジョーブだったもん」

アイリは何故かふてくされたように反論した。

「……どうかしたの、アイちゃん……?」
「……なんでもない……」

アルナはアイリが心配という様子だったが、
これ以上問いかけてもアイリは答えないと判断したのか、
心配そうに見ているだけだった。

こんな雰囲気のままここにいても2人は楽しめないのではないだろうか。
そう考え、
「……そろそろ帰るか?」
と話しかけたのだが、アイリには
「やだ、まだ遊ぶ」
と即答されてしまった。

「あのね、アイちゃん……?
 みんなも心配してるから、そろそろ帰ろ……?」

アルナもなんとか説得を試みたが、アイリは「やだ」と一蹴してしまった。

「あたしは1人でも遊ぶもん……!」

そう言って再び駆け出そうとするアイリの前に、1人のメイドが現れた。

「アルナお嬢様、アイリお嬢様、そろそろお屋敷へ帰りましょう」

俺はこのメイドが何者なのかわからずにいると、向こうからこちらへ話しかけてきた。

「あなたはテンジ様ですね。
 先程トルシュ様からお話を伺いました。
 私はサブリナ、ジェメリー家のメイドで、
 主にお嬢様がたのお世話をさせていただいております」

優しく、どこか知性を感じさせる口調でサブリナは話した。

「やっぱり、お母さまは心配してる……?」

心配そうにアルナが質問をすると、

「それもありますが、リーディア様の体調が優れないのです。
 遊びたい気持ちもわかりますが、今は帰り、
 リーディア様を安心させてあげましょう」

リーディアというのはジェメリー夫人の名前で間違いないだろう。
先程、パーティー会場で耳にした記憶がある。 

「アイちゃん……帰ろ……?」
「……うん……わかった」

緊急事態にアイリは折れ、大人しくアルナ、サブリナ、
そして俺と共に、屋敷へと戻る事にした。





テンジやアルナ、アイリは気付いていなかったが、
先程の騒動を物陰から、仮面の男「ルファク」は密かに目撃していた。

(何故アルナとアイリがこんなところに……?
 それに……何故2人があの『散りゆく者』と共にいるのだ……?

 ……何か、面倒な事に巻き込まれていないと良いが……)

ルファクはそう考えながら、首飾り状に下げた指輪を強く握りしめていた。



(星七号の独り言)
週末でもないのに更新w

多くを語るとネタバレになる(本家やってる人は知ってたりもしますが)ので、
その辺りの話は避けてw

ついにジェメリー家のメイド「サブリナ」が初登場しました。
まぁ、大した出番ではありませんがw

アルナとアイリにとっては姉のような存在なので、
アルナも対等な口調で話す相手です。

元々本家で登場するのは執事2人ではなく、サブリナという従者でした。
色々あって執事2人になったんですが、今回はあえてサブリナさんに戻しました。
執事は執事でジェメリー家にいる想定ですけどね。

しかし、アイリ目線のモノローグ、ムズかしい。

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