Strong Stars Story
Side:Shadow
24「少女達の想い」
俺達がジェメリー家に戻ると、パーティーは中止となり、
ジェメリー夫人は寝室で横になっていた。
別室に集められたジェメリー家の関係者と、
たまたま居合わせた俺に対し、医者が現状を説明した。
医者の話によれば、ジェメリー夫人は流行り病にかかっていたらしく、
それと心労が重なり、体調が悪化したのだろうとの事だった。
「……申し上げにくいのですが、
この病は流行のため、特効薬の製造に必要な原料が足りず、
増産が追いついていない状態なのです……」
医者はまさに、重い口を開き、言いづらそうに話した。
「そこをなんとかしてよ!?
それが仕事でしょ!?」
必死で医者に迫るアイリだが、
「……努力はします……が……、
原料を集めようにも人手が足りず、
中には危険な場所でしか採れないものも必要で……
このままでは、お届け出来るのがいつになるか……」
医者は、話し辛そうにそう語るのみだった。
重々しい空気の中で、口を開いたのはジェメリー家のメイド、サブリナだった。
「テンジ様……冒険者であるあなたに、
原料を調達していただきたいのですが、よろしいでしょうか。
報酬は相応の額をお支払いいたします」
サブリナの表情からは真剣さが伝わってきた。
俺は小さく頷いた。
「……俺にも関わりのある話だ。
冒険者として、出来る限りの事はさせてもらおう」
※
……さっき、チラッと見たママの顔は、すごく辛そうだった。
……ママがこんな事になったのは、あたしのせい……?
……ちがう……『流行りの病気』だって、先生は言ってた……
だけど……やっぱり……
あたしが、ママにいらない心配させたから……
……
……『あたしが悪い』んだ……
……
「……あたしも行く」
「アイリお嬢様……!?」
「ダメだよ、アイちゃん……
アイちゃんが行っても邪魔になっちゃうし……
それに、危険な場所だって先生が……」
「ダイジョーブ、自分の身ぐらい自分で守るし、
『おじさん』だっているし。
……それより、ママが辛いのに、
いつ帰ってくるかもわからない『おじさん』を
大人しく待ってるなんて……ムリ!
あたしは誰が何と言っても、いっしょに行く!!」
※
……ダメだよ、アイちゃん……
わたしたちは……きっと、『あの時』と同じ……
『なにも出来ない』……
だから、『なにもしちゃいけない』……
……
だけど、お母さまは『わたしたちのせい』で倒れたんだ。
わたしが、アイちゃんを止められていたら、
わたしが、アイちゃんを連れて、早く帰れたら……
わたしが、おねえちゃんとして、もっとしっかりしてたら……
……
やっぱり、『わたしには、なにも出来ない』んだ……
……
「……アイちゃん……
これ以上、みんなを困らせるのは、やめよう……?」
「アルナのわからず屋……!
アルナはママがこのまま死んじゃってもいいのっ!?」
「いやっ……!
いやだけど……っ……でもっ……」
※
2人が口論を始めてしまった。
涙を浮かべるアルナ、怒るアイリ……
母が倒れ、その原因に自分達が少なからず関わっているのだと考えれば、
このぐらいの年齢なら、無理もないだろうか。
……しかし、どうしたものか。
『アイリを連れて行く』という事は、それだけ行動に制限がかかる。
いくら、『強き者』であったとしても、
必ずしも戦士として優秀だとは限らない。
それもアイリの性格を考えると……無茶をさせないよう、目が離せない。
……俺が言葉を詰まらせていると、
困ったようなため息を浮かべながら、サブリナが口を開いた。
「……わかりました。
私も同行し、アイリお嬢様をお守りしましょう。
アイリお嬢様がいては、テンジ様も目が離せないでしょうから」
サブリナは、俺の考えを見抜いたようにそう言った。
「……待て。
これから行くのは危険な場所だという。
アイリに加え、戦いの心得がないメイドまで連れていくのは……」
「ありますよ、戦いの心得なら。
こう見えても、武術大会で準優勝した事がありますから」
そう言ってサブリナは、優しい笑顔で微笑んだ。
その優しげで、華奢な姿からはとても信じがたい話……だが、スピカの例もある。
その話が本当ならば……アイリを任せられるかもしれない。
「その話……信じて、良いんだな?」
「はい。
メイドとして、お嬢様を守ってみせます」
サブリナは、優しく、あたたかな笑顔を見せた。
「……アルナはどうするの?
本当はアルナも行きたいんでしょ?」
アイリがそう言うと、アルナは困ったような顔で悩み、
そして、悩んだ末に、涙を流しながら小さく頷いた。
「……わたし……も……お母さまの力に……なり、たい……」
アルナは、勇気を振り絞ったように、そう言っていた。
……これで4人、か。
俺以外の3人はどんな力を持つかわからない。
……覚悟を決める必要はありそうだ。
(星七号の独り言)
野良犬、お嬢様、お嬢様、メイド。
凄いパーティー編成ですね!
Side:Shadowではアルナ&アイリだけでなく新キャラのサブリナも同行します。
それはそれとして、
なかなか思うように進められておらず、お待たせしております。
これからもマイペース進行が続くかもしれませんが、
出来れば見捨てないでくれたら嬉しいです。
そしてRO15周年、おめでとうございます。
1. 羨まけしからんPT編成とか言ってる場合じゃないけども
例のパーティーを思い出しました。
庶民、お姫様、お姫様、お姫様。 あと1人も王様。
責任感に駆られて意固地になっちゃうアイリちゃん可愛い!!
泣いちゃってるアルナちゃん可愛い!!
…怒り顔や泣き顔で悦ぶなんて、遂に後戻りできない領域に来てしまったか。
と思ったのですが、以前から自分はこんな調子でしたねすみませんorz
笑顔が一番だと思ってるからまだセーフ!
Re:羨まけしからんPT編成とか言ってる場合じゃないけども
>怒り顔や泣き顔で悦ぶなんて、遂に後戻りできない領域に来てしまったか。
アイリに「ヘンタイ!」って言われたり、
アルナに「…ヘンタイさんなんですか…?」
と心配そうに言われたらファイさん喜んでそうですよねw
>笑顔が一番だと思ってるからまだセーフ!
ですね! 笑顔が一番ですとも!
>例のパーティー
なんの事かと思ったら30周年を迎える某シリーズの5作目ですか!w
べ、別に意識したワケじゃないんだからね!w