Strong Stars Story
Side:Shadow
29「全力」
「……行きますっ!」
アルナが杖を振るうと、地面から刃と化した巨大な岩が現れ、一角竜へと攻撃。
そこにアイリが杖を振るい、光の輝きによって追撃を行った。
多少のダメージは与えられたのかもしれないが、
一角竜は屈する事なく、アルナに分裂する火炎弾を放ち、攻撃した。
「させないよっ!」
アイリはアルナの前に光の壁を発生させ、火炎弾による攻撃を無効化。
そのままアルナとアイリは、様々な攻撃方法で一角竜に攻撃を仕掛けたが、
決定的な一撃は与えられずにいた。
「……やっぱり、普通の攻撃じゃダメ……
それなら……っ!」
アルナは杖を振るい、一角竜目掛けて魔法による火炎弾を放った。
火炎弾は一角竜が放ったもの同様に分裂し、
無数の弾丸となって一角竜に全弾命中したようだ。
「グオアァァァァァッ!?」
これまで有効な一撃を与えられなかった一角竜が、
アルナの放った「模倣の一撃」で苦しんでいる……
これは逆転の好機と言えるかもしれない。
一角竜は傷を負いながらも再び立ち上がり、アルナへと襲いかかったが、
アイリがその攻撃を無効化した。
「させないってば!」
「……効いてないワケじゃない……
もっと魔力を集中出来れば……」
真剣なアルナの言葉を聞き、アイリは不敵に微笑んだ。
「アルナ、何分あればあいつ倒せる?」
「5分……ううん、3分あれば……!」
「わかった。
なら、3分だけあいつと遊んであげるっ♪」
アイリは杖を振るい、一角竜の顎下にある「逆鱗」へ目掛けて光弾を放った。
「アイちゃん……っ!?」
「こうすればあいつ、あたしが死ぬまで追っかけてくるんでしょ?
ちょーどいいじゃん……!」
逆鱗への攻撃を受けた一角竜は怒りに身を任せ、
狂ったようにアイリへと猛攻を仕掛けた。
アイリは不思議な力で自らを加速させ、
機敏に動き回り、全ての攻撃を避けきっていた。
「あはは、タンチョー♪
全部読み通りっ!
……さぁ! アルナっ!!」
アイリは自らが囮となる事で、アルナが魔力を集中するための時間を稼ごうとしていた。
失敗すれば命を落とす……恐らくはそれを理解した上で。
「アイちゃん……っ……!!」
アイリの狙いに気付いたアルナは魔力を杖に集中させはじめた。
本当に3分アイリは耐えきれるのか、
本当に3分逃げ切れば、アルナは一角竜を倒せるのか。
アルナとアイリにはそんな迷いは一切ないようだ。
何故なら、互いが互いを信じた上で、相手のためにも全力を尽くそうとしているからだ。
2人はただ、相手のために今、自分が出来る事だけを行っていた。
「……アルナお嬢様、私の魔力もお使いください」
サブリナは手をアルナにかざし、自らの魔力をアルナに差し出した。
「サブリナさん……?」
「私の魔法は、いわば力のコントロール……
攻撃を吸収、圧縮、解放も出来れば、
こうして力を分け与える事も出来ます。
……お嬢様、後は頼みましたよ」
サブリナは穏やかにアルナに微笑みかけた。
「はい……っ!!」
「サブリナ……足しになるかわからないが、
俺の力もアルナに与えられるのか?」
「……やってみましょう!」
どこまでも高まっていくアルナの魔力は、
あまり魔法への理解がない俺にも感じられた。
周囲の力の流れの全てが、アルナに集まっている……そんな錯覚を覚えるほどに、
今のアルナは強い魔力で満ち溢れていた。
「アイちゃん、サブリナさん、テンジさん……
行きます……っ!!
これがわたしたちの……全力ですっ!!」
アルナが杖を振るうと、超特大の火炎弾が一角竜へ目掛けて放たれた。
「鬼ごっこおしまい!
楽しかったよ!」
アイリは笑顔で手を振りながらテレポートを発動し、
一瞬でアルナの後方へと退避した。
アイリを見失い、戸惑う一角竜を前に、
超特大の火炎弾は無数に分裂し、その1つ1つが燃え盛る竜の爪へと姿を変えた。
さらにそれは、再び収束するように一角竜へと集まっていき、
まるで喰らい尽くすかの如く、激しい炎が一角竜を焦がしながら、
その身体を次々と抉っていった。
「グォォォアアアアアァァァァァァァァ……ッ……」
叫び声をあげながら、一角竜はその場に倒れ、そして……ついに、力尽きた。
「まだ3分経ってないよ、アルナ」
「サブリナさんやテンジさんが力を貸してくれたし、
それに……アイちゃんを待たせたくなかったから……」
アルナはそう言いながら小さな笑みを浮かべた。
「ありがとっ、アルナ!」
アイリは満面の笑みでアイリに抱きついた。
(星七号の独り言)
次でアルナ&アイリ編は終わりです。
なので次の話は10日お待たせせずに早めの更新を予定しています。