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Side:Shadow 38「実験体」

Strong Stars Story
  Side:Shadow
   38「実験体」

『わたしはミア! ミア・プロティス!
 えへへ~、こうやって自己紹介するの、夢だったんだよね~』

……それで、ミア。
俺はスピカ達の戦いを止めたい。
そのためには何をすれば良い?

『焦る気持ちもわかるけど、まずは落ち着いて、ね?
 ここは時間の流れ方が違ってね、テン君がどれだけここにいても、
 現実での時間は進んでないんだよ』

……テン……君……?
俺の事か……?

『だって、テンジ君でしょ?
 だから、テン君かなって。
 テンちゃんとか、テンテン君とか……あ、ジー君もいいかも?』

俺にはミアの姿は見えない。
だが、声から察するに、きっとミアは満面の笑みを浮かべている事だろう。

……好きにしてくれ。

『じゃあ、テン君で!』

……呼び名より、俺はここで何をすれば良い?

『わたしたちの過去を知って欲しいの。
 どうして、アル君があんな風になっちゃったのか、
 どうして、ルファ君がテン君を敵だって言っていたのか……』

俺の視界内に突然、甲冑を身にまとった大男が姿を現した。
巨大な剣を携え、後頭部には太い管が突き刺さり、どこかへと繋がっているようだ。
その姿は人の形をしてこそいるが、
まるで、人とは思えないような異質さ……
そして、不気味さを感じさせていた。

『ここ、ゾルダート第1研究所はね、人間を戦いの道具にするための施設……
 あの人、Oph-α……
 わたしたちはラスアルフとかラスアル君って呼んでたんだけど、
 あの人が一番最初の実験体なんだ』

少し前まで楽しげだったミアの声は、気が付くと悲しげで、
それでも過去の事だと割り切ったような声へと変わっていた。

ラスアルフと呼ばれた実験体はぎこちなく動きながら、
重々しく剣を振り下ろした。
威力こそは中々のものではあったが、動きがあまりにも遅すぎる。
これでは攻撃を行う前に倒されてしまうだろう。

……実際にラスアルフはあまり良い成果を出せず、凍結され、
その後も5人の実験体が投入されては良い成果を出せなかったようだ。

実験中の事故で力尽きた者……
自らの力を使いこなせず実験による戦いに敗れた者……
様々な光景が俺の目の前に現れては、次々と消えていった。

そんな時、俺の視界内に
どこか見覚えがあるような赤毛の少年が現れた。

……彼は7人目の実験体、Oph-η。
その姿はまだ10歳にも満たないのだろう。
……だが、姿は幼いが、どこか俺の知るサビクと似ているように思える。

『この人の事はテン君も知っているよね
 サビク……サビ君お兄ちゃん』

サビクはこの時点では過去のどの実験体よりも優れた戦闘能力を持ち、
その分、強い期待を背負った存在だったようだ。

幼き日のサビクは身の丈に見合わぬ大剣を構え、
襲いかかる猛獣をあっさりと斬り伏せてしまった。
返り血を浴びながらもそれを気にする素振りも見せず、
サビクはまた別の猛獣へと攻撃を仕掛けた。

『……この研究所の実験体はね、
 みんなどこからか連れてこられたり、身寄りがなかったり……
 そういう感じなんだけど、実験の中で元々の記憶は消されちゃうの。

 だから、何もない。
 空っぽの器に、ただ、戦う事だけを詰め込んで……
 そうやって、人を戦いの道具にしちゃうのがあの人達の目的なんだって』

全ての猛獣を斬り伏せた実験体に、1人の大人がタオルを投げつけた。

「ケケケッ、やるじゃねぇか、Oph-η」

その声は俺にも聞き覚えがあった。

サビクの眼前には、若き日のナガサーと思わしき男が立っていた。

『あの人はパテラ・フィズ・ナガサー。
 この研究所を持つ組織「ゾルダート」に資金提供をしてたみたい』

サビクはナガサーが投げつけたタオルをも切り捨て、
そのまま1人どこかへと去っていった。

「ケッ、カワイゲのねーヤツ……」

『この実験結果をもとに、
 研究所にはまた新しい実験体がやってきたの。
 最初は10人ぐらいいたんだけど……生き残れたのは3人だけだったんだ。

 素早さを活かした一撃必殺のLupタイプの実験体α……カカブお兄ちゃん』

紫色の髪を持つ少年は、両手に構えた刃を使い、一瞬で5体もの猛獣を倒していた。

『超長距離からの攻撃をするSgeタイプの実験体α……シャムっち』

青白い髪を持つ少女は雷の如き矢を放ち、
遠く離れた場所を飛び回る竜を一撃で地に落とした。

『そして、攻撃の無力化が得意なCarタイプの実験体β……
 それが、わたし、ミアだったんだ』

緑がかった金髪の少女は、アイリが使うものと似た光の壁を発生させ、
大爆発からもその身を守り抜いた。

恐らく、様々な能力の実験体を用意し、
研究データを集めていたのだろう。

時にはまだ幼い実験体同士が戦っている光景も見受けられた。

『それからも何人もの実験体がやってきたんだ。
 ……Perタイプ……攻撃能力に特化した実験体は特に注目されていて、
 その実験体αが……テン君も知っているよね。
 ……ルファ君なの』

金髪の少年が両手に構えた銃で次々と猛獣達を戦闘不能に追い込んでいく。
その姿は俺が知る、現在のルファクと良く似ていた。

『わたしは、直接的な戦いが得意な実験体じゃなかったから、
 この頃にはルファ君のサポート役に回されてたの』

傷付いたルファクを、ミアが放つ光が癒してゆく。
それにより、ルファクはよりその強き力を振るう事が出来たようだ。

『でも、わたし達はあの人達が望む
 「戦いの道具」にはまだまだ不完全だったんだって。
 たった1人で、何万もの敵を倒せる道具……
 あの人達が欲しがっていたものは、そんな存在だったみたい。

 そんな頃に、研究所にやってきたのがこの子……』

俺の視界に、突然弱々しく涙を流している黒髪の少年の姿が現れた。

『Perタイプの実験体β……
 ルファ君よりも強い実験体を目指した実験体……
 それが、アルゴル……アル君だったんだよ』

黒髪の少年は、泣きながらも拳を振りかざし、
自分よりも大きな他の実験体に気弾をぶつけ……そして、消滅させた。

これが……アルゴル……?

『そうだよ。
 アル君は、とっても強い力を秘めていたの。
 だから、わたし達以上に辛い実験も沢山させられてたんだ……』

幼き日のアルゴルは、時には拷問同然の仕打ちを受け、
時には能力が低い実験体の廃棄を手伝わされ……
過酷としか言い様のない環境の中に身を置くにつれて、
真黒だったアルゴルの髪は徐々に白く染まっていった……

『……その後も、多くの実験体がこの研究所にやってきたけど、
 どの実験体もアル君以上の成果は出せなかったの。
 だから、アル君は毎日のように危険な事をさせられて……』

そして、いつしか完全な白髪になった……という事か……

『……うん。

 テン君が知ってる人だと、あとはすーちゃん……
 汎用性を重視したVirタイプの実験体αのスピカちゃんと、
 2人でのコンビネーションを重視した実験体αのアルナちゃんとアイリちゃん……
 なっちゃん、りっちゃんだね』

……ここまでの流れだけでも、
それぞれがどれだけ辛い環境に身を置いていたのかは理解出来る。

だが、わからないのは、何故アルゴルがスピカ達に襲いかかったのか。
それを知るために、俺はここにいるのだろう。

『……うん、そうなんだ。
 それじゃあ、過去の見せ方を変えるね』

ミアがそう言うと俺の前に見える景色は一度まっさらになり、
その後殺風景な白く小さな個室の中へと場面が移り変わった。

今よりも幼さのある、灰色の髪の頃のアルゴルが
ベッド……とも呼べないような簡素な寝床の上で静かに自分の右手を見上げていた。



(星七号の独り言)
年表形式でまとめていたものを誰かの口から説明させる苦労が良くわかりました。
お見苦しくて申し訳ありません。

実験体達の過酷な状況は書かなければその辛さが伝わらないし、
書いたからといって自分も見る側も楽しいものではないので悩みます。

次の話はアルゴル目線で進みます。
本当は39話と2話同時掲載したかったんですが、
40話がまだ出来てないので39話はもう少しかかります。
最低でも1話先が出来てないと落ち着かなくて…
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コメント

1. 呼び名

テンさんは…… いえなんでもないです・x・

Re:呼び名

コメントありがとうございます!

>テンさん
ドラゴンボールを思い出しました(天津飯)w
それも良いように思いますが、サビクもラスアルフも「君」なので、
あまりこっちのミアは「さん」を使わないのかもしれません。
ゲームのミアは自分に「さん」付けてましたけどねw

プロフィール

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星七号
職業:
ゲーム作ったり話書いたりする人