……あの戦いから少しの時が過ぎ、アルナとアイリの義母であるジェメリー夫人に
初めての実子……アルナとアイリから見れば、(血の繋がりはないものの)弟か妹が数ヶ月後には生まれる。
きっと2人は未だ見ぬ弟妹(きょうだい)や自分たちの未来に、期待と不安を抱えているのではないだろうか……
そんなある日、俺の前にアルナとアイリがやってきた。
「お兄ちゃん、どうすればあたしたち、素敵なお姉ちゃんになれるの?」
最初に話を切り出したのはアイリだ。
「わたしたち、素敵なお姉ちゃんになりたいの……どうすればいいのかな?」
アルナもアイリと共に、真剣な眼差しで俺を見つめていた。
「……気持ちはわかる。
……だが、こういう事は俺よりもスピカにでも聞いた方が適任だと思うが……」
「そんな事ないよ!」
「ルファクお兄ちゃんもとっても素敵なお兄ちゃんだよ?」
2人は変わらず真剣な眼差しで俺を見つめていた。
2人が自ら成長しようとしているのに、俺は兄として、その手助けを何もしなくて良いのだろうか……?
俺は、気がついた時には「仕方がない……」と首を縦に振ってしまっていた。
「お兄ちゃんはお兄ちゃんとして、何か気をつけてるの?」
アルナは目を輝かせながらメモを手に俺を見つめていた。
「……お前達の前では無様な姿は見せないようにしている」
俺が言葉を発すると、アルナはメモを取り、アイリは強く頷いていた。
「……たしかにお兄ちゃんはいつでもカッコいいし、弱点のあるお姉ちゃんだとカッコわるいかも……
決めた! あたし、今日から苦手をなくす!」
立ち上がりながらそう宣言するアイリ。
アルナも続いて立ち上がり、「わたしも!」と決意を口にしていた。
アルナの苦手といえば……(盗蟲はさておき、)キノコ、アイリの苦手は辛いものだろう。
俺としては、無理はしなくて良いと思うのだが、本人がやる気なのだ。
兄として、このやる気を削いではいけない。
「わかった……着いてこい」
「……なるほど、それでウチに来てくれたのか。
ようこそ、未来の“お姉さん”たち」
俺が2人を連れてきたのはイズルードにある酒場「デイブレイク」だった。
ここは酒場ではあるが、様々な料理も扱っているし、何よりこの店の料理は美味い。
この店主ならば、アルナとアイリの助けになってくれるのでは……そう考えたからここへ来たのだ。
「よし、アルゴル。
お嬢さんたちのために腕を奮おうか。
アルナさんはキノコ料理、アイリさんは辛いものだね?」
店主であるランドルフ氏とアルゴルは共に調理場へ向かっていった。
「……アルナ、アイリ、無理をする必要はないんだぞ?」
「大丈夫だもん!
あたしたち、素敵なお姉ちゃんになるんだから!」
「うんっ! わたし、頑張る!」
アルナとアイリは再び強い決意を語ってくれた
……のだが、実際に料理が出てくると話は別だった。
アルナに出されたものは小さくカットされたキノコを含む野菜をチーズと一緒に炒めたものだった。
チーズがとろけてカリカリになっており、非常に美味しそうなにおいが店内に広がっていた。
一方、アイリの前に出されたものは豆腐を多く使った麻婆豆腐だ。
視覚と嗅覚でその美味さは安易に想像出来、思わず俺は唾を飲み込んでしまった。
辛さを和らげるために、冷えたミルクもグラスに注がれている。
どちらも実に美味しそうだが、アルナは目の前のキノコを、アイリは目の前の辛いものを前に戸惑っているようだった。
「……無理をする事はないぞ」
「そうだよ、苦手は少しずつなくしていけばいいんだから。
無理ならこれはボク達が食べるし……」
俺に続き、アルゴルも優しく声をかけていた。
「……でも……」
戸惑うような姿を見せながらも、アルナとアイリは互いに見つめあい、小さく頷いた。
そして、2人は決意して差し出された料理を口にした。
その直後、アルナもアイリも慌ててミルクを飲み込んでいた。
「……無理をするな」
俺は思わず2人を止めようとしたが、2人は目の前の苦手に立ち向かう意思を捨てていなかった。
「いや……」
「あたしたち……お姉ちゃんになるんだもん……!」
2人は再び目の前の料理を口にした。
2人はまだ気がついていないのだろう。
未だ見ぬ弟妹(きょうだい)のために苦手をなくそうと努力している。
その想いこそが、その行動こそが、アルナを、アイリを、立派な姉へと成長させている事に。
苦手の克服には時間がかかるかもしれない……だが、俺はいつまでもお前たちを応援し続ける。
俺はいつでもお前たちの味方なのだから……
その日の会計時、店主ランドルフ氏は笑顔で俺にこう言った。
「ところでルファクはいつになったら野菜を食べるんだい?」
「……勘違いするな。
俺は食べられないワケじゃない。
自分の意思で食べないだけだ……」
「じゃあ、今度ご馳走するから、サラダパーティーをしない?」
アルゴルの満面の笑みを前に、俺は何の言葉も返せなかった。
……アルナ……アイリ……お前達はもう既に立派な姉だ。
俺と違って、な……
(後書き)
アルナ、アイリ、お誕生日おめでとう!
約1ヶ月ぶりなのに、随分久しぶりにS.S.S.のSSを書いたような気がします。
最近何かと忙しいからでしょうか…
1年前の「兄は悩む」同様にルファク視点でお届けしました。
去年はアイリと比べてアルナがメイン感があったので、今年は2人を平等に扱いたいという意図からこういったお話にさせていただきました。
本当はこの後、ジェメリー家での食事シーンがあったんですが、ここで終わった方がしっくりくるような気がしたのでプロットから内容をちょびっと変更しました。
アルナアイリ(加えてレオンも)には星七号自身も成長への期待を持っています。
だからこの子達の場合、未来の話も描いたりはしてますが、完成形はまだまだもっと先だと思っていて、無限の可能性を秘めてるんじゃないかと期待しています。
次に描く時にはどうなっているか、楽しみです。
アルナアイリの裏話といえば、職業イメージの設定が二転三転した話があります。
最初はスピカらと同じく上位2次職で元々考えていて、ハイウィザード&ハイプリーストだったのが、
2次職になって、アルナはウィザードにするかセージにするかで揺れて…
まぁ、施設出身の実験体達は育った環境が普通の冒険者とは大きく違うので職業はあくまでイメージレベルでしかないんですけど。
あと、最初の頃はアルナはスピカ、アイリはサビクに特になついてましたね。
アルナアイリは実装が後の方だっただけに、色々と設定が二転三転ありました。
この辺からもアルナアイリの難産っぷりがご理解いただけるのではないかと思います…
難産だから実装が後になったワケではないんですけどね。
話が逸れましたが、アルナちゃん、アイリちゃん、お誕生日おめでとう。
ひとくちケーキとピーチケーキ、欲しがってた本とぬいぐるみでお祝いをしましょう。
ハッピーバースデー!


(前回のバースデーとは逆の並びにしました)
1. お兄ちゃん…(笑)
ルファクに生温かい目を向けつつ、アルナ・アイリにおたおめと伝えたいw
Re:お兄ちゃん…(笑)
昨年もお兄ちゃん…(笑)な感じだったのですが、そこは引き続きでしたw
アルナアイリにはどんどん成長してほしいですね!
ルファク…は成長の余地があるのかわかりませんが(酷い)w