「よう、元気そうだな」
数ヶ月ぶりに姿を見せたサビクさんは、そう言って小さく微笑んでいた。
「えぇ、元気が俺の取り柄ですから」
そう言って、俺は笑顔を見せた。
「どうだ、たまには飲らねェか?」
サビクさんの思いもよらない誘いに、俺は
「サビクさんみたいに強くありませんからね。
1杯ぐらいなら」
と笑顔で返した。
※
「えっ……誕生日、ですか!?
あれ、今日だったか……うっかりしてましたよ」
乾杯を済ませた後で、ちびちびと酒を飲みながら、
レオンはそう言って笑っていた。
「ったく、数年前までは物欲しそうな顔して
『今日は何の日か知ってますか……?』
って言ってきたヤツの言葉かよ」
そう話しながら俺も小さく笑みをこぼしていた。
「ほらよ、今年のプレゼントだ」
俺は1冊の本を手渡した。
「ありがとうございます!
えっと……必殺技大全……?」
「おう。何年か前に、お前が必殺技教えろって五月蝿かったからな。
欲しかったら自分で編み出せ」
「いつの話です、それ……?」
レオンはそう言いながらも懐かしい過去を思い返しているようだった。
「……で、なりたかったお前になれたのか?」
レオンは静かに口を開いた。
「……まら……れすよ……
もくひょーが……おおきすぎる……れす……
ボクなんか……まら……まら……」
「らけろ……いつか……きっと……」
いつの間にか顔を真赤にしていたレオンは
そう言いながら、幸せそうな笑顔で眠りについた。
ったく……あのキャンキャン五月蝿い子犬が随分デカくなったモンだ。
『お前は充分立派だぞ』
そう言ってやろうかとも思ったが、
俺は出かかった言葉と一緒に酒を飲み込んだ。
「お前のおかげで酒が美味いぜ。
誕生日、おめでとう」
(後書き)
レオン、ハッピーバースデー!
本当はレオンがサビクに必殺技を教えろとねだる話を考えていましたが、
いつの間にかこうなってました。
作業BGM:「少年よ」(仮面ライダー響鬼)