当ブログのSSは個人的に作成した非公式なものです。それを踏まえてご覧いただけると嬉しいです。 忍者ブログ

あくまで非公式です

ラグナロクオンラインのクエスト「Strong Stars Story」関連の非公式SSサイトです。はじめての方は「はじめに」をご覧ください。 ©Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved. ©GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved

目覚めし白い悪魔(非公式アルゴルSS)

ボクは、生きている。
ボクは今までに、多くのものを破壊し、多くの命を奪った。
ボクの命は数えきれないほどの犠牲の上にある事を、ボク自身も理解している。

ボクはこれまでにたくさん間違ってきた。
間違えたからこそ、たくさんのものを失ってきた。
ボクが間違わなければ、失わずに済んだものがどれだけあるのだろう。


あの戦いの後、ボクはランドルフさんと一緒にデイブレイクで働くようになった。
お酒や料理を作るのはまだ慣れないけど、学ぶ事ばかりで毎日がとても楽しい。

兄さんやスピカたちも時々店に顔を出してくれている。
この間、ルファクがボクの作ったローストビーフサラダを食べて一言「美味かった」と言ってくれたのはとても嬉しかった。

まるで「何もなかった」かのような、穏やかな日々でありながら、モノクロームの世界に色が溢れていくような、幸せな時間。

ボクは知っている。
いつまでも、このままではいられない事を。
いつの日か、この平穏は終わってしまう事を。

あれからしばらくの時が過ぎて、遠くの街に「白い悪魔」と呼ばれる者が現れ、破壊活動を始めたという噂を聴いた。
そしてその日、ボクはデイブレイクを旅立った。


ボクの前に、「白い悪魔」が立っている。
その姿は、「かつてのボク」そのものだった。

ボクは施設が造り上げた強化戦士の実験体……
彼らにとって、「商品」になるハズだったモノだ。

そんなモノが、“唯一”であるワケがない。
彼らが万が一に備えないハズがない。
ボクはずっとそれを気にしていた。
そして、その考えは正しかった。

目の前には……恐らくボクのデータを複製し、生み出されたであろう、戦うための白い悪魔が立っている。
彼は感情を持たない。
ボクと同じ力を持ち、ただ敵を滅ぼすためだけに戦う、完全な悪魔だ。

ボクは赤い拳「ギガントクラーク」を装備し、覚悟を示した。

「もう、あの時のような悲劇は繰り返させない……」

ボクは勢いよく白い悪魔に攻撃を仕掛けた。
身体能力は同じ……決して楽に倒せる相手ではないだろう。
……ボクのすべてを賭けても倒せるかどうはかわからない。

でも、やるしかないんだ。
償うために……星屑たちの十字架を背負っていくために。

ボクは傷付き、自分自身の血にまみれながら、白い悪魔に赤い拳を突きつけた。

「……終わりだ!」

ボクに残された、すべての気を白い悪魔に向けて放出した。

白い悪魔は跡形もなく、消え去った。
そして、力を失ったボクは、その場に倒れた。


これですべてが終わった。
ボクのすべてが……そう思った時、近くにボクではない、今倒した白い悪魔でもない者の気配を複数感じた。
もう動きそうにもない身体を必死で動かし、気配を放つ者の方に視線を向けると、そこには

無表情にボクを見下している、“かつてのボク”が6人いた。
複製されたボクは……白い悪魔は1人ではなかったんだ。

立ち上がる力はもうない。
何度も間違い、多くを失い……それでもまだ生きて、償おうとしたボクの、あまりに無力な最期。
これが、力を求めた者の終わり。

「……ごめんなさい」

ボクが必死で発した言葉は謝罪だった。










「謝る必要はないぜ……アルゴル、お前は俺たちと生きて帰るんだからな!」

ボクは耳を疑った。
聞き間違えるハズもない……大好きな兄さんの声だった。

「1人では出来ない事も、力を合わせれば出来るようになる……
 それを証明しないとね!」

スピカの声だ。

「わたしたちも……戦います!」
「すぐに回復してあげるからね!」

アイリ、アルナ……

「フンッ……貴様の考える事などお見通しだ」

ルファク……
そしてもう1人、ボクたちを繋ぎ、救ってくれた冒険者が一緒にいる事を、ボクは理解した。

アイリが放つの奇跡の光によって、ボクの身体に失われた力が沸き上がってきた。
ボクは再び立ち上がり、みんなに思わず礼を言った。

「礼は後だ。
 まずは……“生きて帰る”事!
 それが今、俺たちが唯一やらなきゃならねぇ事だ!」

「サポートは任せて!
 あたしたちも色々出来るようになったんだから!」
「ビックリしないでくださいね?」

「アルナ、アイリ……お前たちには指一本触れさせない、安心して戦え」

「ふふっ。
 さぁ、力を合わせて……行くよ!」


ボクは、生きている。
ボクは今までに、多くのものを破壊し、多くの命を奪った。
ボクの命は数えきれないほどの犠牲の上にある事を、ボク自身も理解している。

ボクはこれまでにたくさん間違ってきた。
間違えたからこそ、たくさんのものを失ってきた。
ボクが間違わなければ、失わずに済んだものがどれだけあるのだろう。


それでも、ボクは生きていく。
色んなものを背負い、償いながら。
傷付いても、倒れても、それでも前を向いて、未来へ向かって生きていく。

いつかボクが求めた強さ……
その正体が、今のボクにはわかるような気がした。



(後書き)
これはアルゴルの誕生日(12月21日)を記念して…と言ってもなかなか自分の中での整理がつかず、2016年になってから書いたものです。

「目覚めし白い悪魔」は元々、S.S.S.のAfter Episodeとしていつかやりたいなー、と考えていた話をベースに再構築したもの、非公式という形ではありますが、もう1つの最終話…ぐらいの気持ちで書きました。

実はアルゴルのSSを書くにあたって、かなり悩んでいたんですよ。
何を書きたいか、何を書くべきか、何を書いて良いのか。

アルゴル自体は非常に気に入っているキャラクターなのですが、まだ自分の中で5年経ってもアルゴルに「やりきっていない」感がどうしてもありまして。

Final Episode後、元気にデイブレイクで働くアルゴルを描くという案も考えたのですが、アルゴルは光と闇、表と裏、2つあってのアルゴルだという想いがどうしてもあって。

「ダークアルゴルは悪い奴だったねー」…完。

…なんていう扱いにはしたくなくて。
人間誰しもが抱えているであろう、未熟さ、弱さ、それが見え隠れしてこそアルゴルという星は輝くと思ってるんです。

だからケジメとして、どうしてもやっぱりやっておきたい話だったので、この機会に形にしました。
ごめん、アルゴル。
君にまた重いものを背負わせてしまった。

でも、読んでもらえればわかりますが、これでS.S.S.の全てが終わるワケじゃないんです。
気持ちを整理するための通過点なんです。

アルゴルは最初から「起点」と「終着点」、つまり依頼人にしてラスボスという構想で作ったキャラクターです。
これはポッと出のラスボスよりも、物語を進めていく内に「本当に彼は味方なのか?」と感じる要素やサプライズ感を持たせたかったからです。
構想順はサビクに次いで2番目ですが、最初期から名前が決まっていたのはアルゴルだけでした。
かなりS.S.S.はアルゴルありきの話と言えます。

アルゴルという星は、ペルセウス座の星で、悪魔の頭という意味を持つ、英雄ペルセウスが持つメドゥーサの首に位置する星です。
食変光星というタイプの有名な星でもあり、明るさが変わって見えるような性質もあるそうです。
これらの要素とアルゴルの裏の顔(いわゆるダークアルゴル、略して悪ゴル)を絡めた設定になっています。
(ちなみにルファクの元ネタであるミルファクもペルセウス座の星です)

色味のテーマは「冬」で、スピカ(春)、サビク(夏)、アルナアイリ(秋)から続く第4の物語の中心である事から来ています。
イメージカラーは黒で、S.S.S.のメインキャラ達は全員四神+黄龍が司る季節、色をイメージの一部に持たせています。
(属性は異なってますが…)

誕生日も12月21日と冬で、誕生花はプロテア、花言葉は自由自在。
この辺りもダークアルゴルの存在に絡めたものです。

武器の名前は「ギガントクラーク(ロシア語で「巨人」「拳」)」、苗字のシーラもロシア語で「力」を意味します。

苗字や武器名に関しては
スピカ(フランス語)
サビク(ラテン語)
アルナアイリ(イタリア語)
アルゴル(ロシア語)
ルファク(英語)
というイメージで使い分けました。

ギガントクラークに関しては元になった武器は存在しません。
「血塗られた拳」というコンセプトのため、真紅のナックルで、ひたすら攻撃性を追求したものになっています。
アルゴルは力を求め続けていたので、「力の象徴」と「渇望の現れ」として大きな拳だったりします。

PR

コメント

1. サイト開設おめでとうございまーす(∩´ω`)∩

 アルゴル話… とてもシリアスなのに、最後のドット絵でいつも噴き出してしまう…!www
 なんか… いろんなところからなんか出てるよ!!!!!wwwwwww

Re:サイト開設おめでとうございまーす(∩´ω`)∩

いらっしゃいませー!

自分の小学生レベルのドットぢからでlala先生の描くようなダークオーラを無理に表現しようとした結果ですw
いやぁ、包み込む形の方がそれっぽいかもしれませんが、でも笑ってもらえるならそれはそれでアリだったり…?

また遊びに来てくださいねー。

プロフィール

HN:
星七号
職業:
ゲーム作ったり話書いたりする人