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Side:Shadow 11「砂の街へ」


Strong Stars Story
  Side:Shadow
   11「砂の街へ」
ある男と出会うため、俺は砂漠の街を訪れていた。
この街は数年前、あるモンスターの封印が解けた事で多くの建築物が破壊され、
街の中心には今も巨大な破壊の傷跡が残されている、寂しげな街だった。

あれから、再びスターオーブが俺とアルゴルに「強き者」のイメージを見せた。
今回の「強き者」は、「駆け抜ける伝説の勇士」と呼ばれ、
砂漠の街で暮らす、左頬に傷跡がある赤毛の男のようだ。

スターオーブに導かれるままに、砂漠の街を歩いていると、
大きな木の下で煙草を吸っている、赤毛の男と遭遇した。

左頬には傷があり、その男の姿は、スターオーブが見せたイメージの姿は一致していた。
微かではあるが、スターオーブは赤い光を放っている……
この男が強き者「駆け抜ける伝説の勇士」と考えて間違いないのだろう。

「……何か用か?」

煙草を吸っている男が先に、俺に声をかけてきた。
これは、この男と関わる良い機会だろう。

「この辺りには詳しくなくてな。
 食事が出来る場所を教えてほしい」

男は静かに煙草の火を消すと、面倒くさそうに歩き出した。

「……来いよ、案内するぜ」





男に案内されたのは、「フォルトゥナ」という酒場だった。
店に入った俺達を、金髪の女が明るく出迎えた。

「いらっしゃいませ!
 ……って、サビクじゃない!?
 あなた、また仕事サボってたでしょう!?」

金髪の女は、俺を案内してきた赤毛の男「サビク」を前に怒りをあらわにしていた。

「……そう怒るなよ、レナ。
 こうして客を連れてきたんだ。
 それに……イイ女ってのは、あまり怒らないもんだぜ」

サビクはどこか宙を見ながら、小さく笑い、「レナ」にそう語りかけた。

「……甘やかすだけがイイ女じゃないと思うけど?」

レナはため息をつきながら、そうサビクに返した。
サビクは目も合わさず、何も言わずにただ、頭をポリポリとかいていた。

「いきなりごめんなさい。
 どこでも空いてる席に座ってね」

レナは俺に軽く謝った後、感じの良い笑顔で微笑んだ。

「飯が食いたいらしい。
 なんかテキトーに作ってくれ、俺の分も」

サビクは奥の席に座り、その向かい側の席に俺も座った。
間もなく、レナが水の入ったグラスを1つ、運んできた。

「……俺はテンジ。
 冒険者だ、一応な」
「……ふーん。
 覚えておくぜ、忘れるまでは」

サビクは先程と同じように、小さな笑みを浮かべたまま、
俺の目の前に置かれた水を飲んでいた。

不思議な男だ、と俺は思った。
笑ってはいるものの、心の底から喜んでいたり、楽しんでいる気配はない。
むしろ、この男の笑みはどこか寂しげで、疲れを感じさせるものだった。
まるで……破壊の傷跡が残されたままの、この街のような……

俺がそんな事を考えながらサビクの顔を見ていると、
サビクは頭をかきながら、不満を漏らした。

「……なんだよ、ジロジロ見やがって。
 男に見つめられて、喜ぶ趣味はないぜ……?」

サビクがそう言う頃には既に、俺が飲むハズだった水はなくなってしまっていた。

「レナ、ウォッカベースの何か……
 あー……そうだな、カミカゼをくれ。
 こいつが飲むとさ」

俺は何も言っていない。

「……そんな事言って、あなたが飲むんでしょ?」

呆れた表情でレナはそう呟いた。

「じゃあ、2杯くれ。
 それで文句ないだろ?」
「……あなた、今、勤務時間中だってわかってるのよね?」
「当たり前だろ、何言ってんだ?」
「……勤務中にお酒を飲む用心棒が、どこにいるの……?」
「ここにいるだろうが」

呆れ果てた様子のまま、レナは店主へと注文内容を伝えにいった。





「テンジさんって言ったかしら?
 今日の飲食代はサビクのお給料から引いておくから、好きなだけ注文してね」

「カミカゼ」という酒と、いくつかの料理を運んできたレナは、笑顔でそう言っていた。

「さぁ、楽しく飲(や)ろうぜ」

レナの言葉を聞き流しながら、サビクは相変わらずの表情で酒の入ったグラスに手をかけた。
正直、俺はあまり酒が得意ではなかったが、一杯ぐらないならば問題ないだろう。

「……仕方がない、付き合おう」

俺とサビクは酒の入ったグラスを軽く打ち付け、互いにグラスの中の酒を飲み込んだ。

俺が少しずつ飲んでいる間に、サビクは全てを飲み干しており、
レナにもう1杯同じ酒を注文していた。

「なんだお前、酒は苦手か?
 結構飲めそうな雰囲気なのによ」
「……飲む機会がなく、慣れていなくてな」

そう言いながらも飲む俺を前に、サビクは再び小さく笑っていた。

「酒は良いぜ。
 ……飲んでりゃ、『酔っ払い』になれるんだからな」

俺にはサビクの言う言葉の意味がわからなかった。
その意味を尋ねようとした時、レナが新しいグラスをサビクへと運んできた。

「……酒は飲んでも、飲まれるな。
 程度をわきまえて飲むものよ。
 サビクみたいな飲み方はオススメしないわ」
「うるせェ。
 酒場で飲んで何が悪いんだよ」
「……勤務中に飲む事が問題だって言ってるの」

不満を口にするレナと、一切目を合わせずに酒を飲むサビク。
そんな2人を見ながら、俺は気が付くと無意識のうちに
サビクが本当に「強き者」……
「駆け抜ける伝説の勇士」と呼ばれる者なのか、と疑問を抱いてしまっていた。

……頬の傷を見る限りでは、戦士である事に違いはないと思うのだが。

俺がそんな事を考えていると、
酒場には相応しくない、まだ幼さの残る1人の少年が店内へやってきた。
少年は、サビクの姿を見つけると、その顔を太陽のように輝かせながら駆け寄ってきた。

「サビクさぁーんっ!」

「あら、レオン。
 配達は終わったの?」

レナにレオンと呼ばれた少年は、深く頭を下げながら、サビクに話しかけた。

「サビクさんっ!
 ボクに、剣術を教えてくだっ……」
「断る」

レオンが言葉を言い切る前に、サビクはそれを拒否していた。

「どうしてですかっ!?
 授業料はちゃんと払います!
 絶対に弱音吐いたりしませんっ!!
 どんな事にも、耐えてみせますっ!」

レオンという少年は、必死でサビクに拒否する理由を問いかけていた。

「……何回言わせりゃ気が済むんだ。
 教える気がないから教えない。
 これ以上の理由をわざわざ言わせるな」

サビクは目を合わせないまま、そう言い放った。
レオンは言葉を失い、悲しそうな表情を浮かべ、
レナは不満そうに、サビクを睨み付けていた。

「……レオン、サビクなんかに教わる必要はないわ。
 剣術なら、サビクでなくたって……」
「姉さんだって知ってるでしょ、サビクさんの強さは!
 ボクは、あの時のサビクさんみたいに、強くなりたいんだ!

 ボクはいつか、強くなって……!!」

真剣な眼差しでそう語るレオンを前に、
サビクは不機嫌そうに立ち上がり、舌打ちをして店から去っていった。

「サビク……」
「サビクさん……」



(星七号の独り言)
始まりました、第2章 サビク編。

サビクさんのキャラクター像は、初期設定も踏まえつつ、再構築しているため、
本家とは雰囲気が違って見える方ももしかしたらいるかもしれません。
初期設定にあった、女好き成分は控えめになっていますが、
「覚えておくぜ、忘れるまでは」なんかは初期設定の頃に想定していた台詞です。
(我ながら、よく覚えてるなぁ)

レテーナさんがレナさんになってるのには、ちゃんと理由があります。
(初期設定では名前が違ったレテーナですが、
 レナではなくイニシャルBでした)
その辺りは後にわかる事でしょう。
理由もなく変えたワケじゃないよ、とだけ今回は言わせてください。

レオンは…あまり変わってませんねw
一人称が「僕」から「ボク」になりました。

仕事もなんだかんだで忙しいですが、
なるべく待たせずに続きを公開出来るよう、頑張ります。
ただしスピカ編よりはゆっくり進行になる事は予めご了承くださいw
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星七号
職業:
ゲーム作ったり話書いたりする人