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Side:Shadow 12「その星は輝かない」


Strong Stars Story
  Side:Shadow
   12「その星は輝かない」

サビクの去った酒場「フォルトゥナ」で、俺はレナとレオンの話を聞いていた。

「サビクが初めてこの店に来たのは、今から1年ぐらい前だったかしら……
 その日は、叔父さん……店長がお休みで、店に男手がなかったの」

俺は、酒を少しずつ飲み、揚げ物を味わいながら、レナの話を聞いていた。
 
「そんな時に、ブラック兄弟っていう、
 この街の厄介者代表みたいな人達が店に来て
 困っていた私を、助けてくれたのがサビクなのよ」

レナは穏やかな表情で、懐かしむようにそう語っていた。

「その時のサビクさんは、
 ビシッ! バシッ! ドドーン!
 って、それはもう、大活躍だったんです!
 相手は何人もいたのに、1人でっ!」

レオンは、目を輝かせながら、
身振り手振りを使って、サビクの活躍を説明していた。
その時の光景は目に浮かばないが、
レオンが興奮する程のものであった事は、良くわかった。

「……それがきっかけになって、行く宛もなかったサビクを、
 この店の用心棒として店長に紹介したの」

「サビクさんが用心棒になってからは、
 ブラック兄弟も目立った悪事を働かなくなったんですよ!
 やっぱり、サビクさんはすごいんですっ!」

自分の事でもないのに、レオンはとても誇らしげだ。

「……だが……」

俺が静かに口を開くと、レナは俺が何を言いたいのかを理解したようだ。

「……その後のサビクは、
 仕事はサボるし、仕事中にお酒を飲むし、さっき見た通りの男よ。
 せめて、レオンの剣を見てくれたら良いんだけど……」

そう言いかけた途中で、レナは何かを思い付いたように俺の顔を見た。

「そうだ!
 あなた、冒険者よね?
 私の弟、レオンに剣の稽古を付けてもらえないかしら?」

「ねっ、姉さん!
 急にそんなの迷惑だよ……!」

レオンは見るからに動揺しているようだった。

「だっていつも、サビクの事情もお構いなしで、剣術教えてください!
 って言ってるじゃない」
「そ、それは……
 まぁ……そうだけど……」

レナの鋭い指摘に、レオンは口ごもっているようだった。

「すまないが……俺の剣はかなり特殊でな。
 誰かに教えるようなモノでもない」

「そう……」と残念そうに漏らすレナの隣で、レオンは身の丈に合わない
大きな剣を、大切そうに抱えていた。

「……大切な剣なのか?」

「はい!
 前に、サビクさんがボクにくれたんですっ!
 だから、絶対に、これを使いこなせる立派な剣士になりたくてっ!」

恥ずかしげもなくそう語る、レオンの瞳はまぶしいほどに輝いていた。

「……そうか。
 なれると良いな」
「はいっ!」

俺は、料理と酒の代金を払おうとしたが、
レナは「サビクの給料から引く」と言って頑なに受け取らなかった。
「ご馳走様……美味かった」とだけレナや店主に伝え、「フォルトゥナ」を後にした。





前と同じ、大きな木の下で、サビクは不機嫌そうに煙草を吸っていた。
とてもこれが、本来勤務時間である男の姿には見えない。

「……」

俺は、サビクの力量を確かめるため、
「天狼」を鞘に納めたまま、サビクへと攻撃を仕掛けた。

かなり手加減はしているが、それでも相応の威力はある一撃……
それを、サビクは必要最小限の動きだけで避け、
不機嫌な視線を俺へと向けた。

「……ずいぶんなゴアイサツだな?
 ……えーっと……」
「……テンジだ」

サビクは変わらず、不機嫌な顔のまま、会話を続けた。

「殺気も敵意もなく襲いやがって……どうした?」

「お前の力が見てみたい」

俺の言葉に、サビクは頭を抱えた。

「……またレオンの奴、余計な事話したんじゃねェだろうな……」

面倒くさそうに頭をかいているサビクに、俺は遠慮せずに攻撃を仕掛けた。

「チッ……面倒くせェ……」

サビクは避けるばかりで反撃する気配を見せなかった。

「真面目にやれ」
「……真面目な酔っ払いが、いてたまるかよ」

攻撃を避け続けるサビクは、
影に溶け込むように俺の背後へと回り込んだ。

「……テンジ、とか言ったか?
 お前こそ本気出してないだろ。
 そんなんじゃ、喰らってやる価値がないぜ」

「そういう武器なんでな……こいつは」

俺が天狼を振るいながら背後を見ると、既にそこにはサビクの姿はなかった。

……気配がない。
既にこの近くにはいないのだろう。

「……逃がしたか」

俺は、ため息をつきながら、納刀状態の「天狼」を片手に、その場を後にした。





テンジ……とか言ったか……?

いきなり襲いかかってきた黒髪の男から逃げ出した俺は、
街の路地裏でため息をついていた。

「お前の力が見てみたい」

あいつはそう言っていたが、俺にはもう、力なんか必要ない。
こんなもの……いざという時には、何の役にも立たないんだ。

どうせまた、レオンが余計な話でもしたんだろうが……
あいつはいったい俺を、何だと思っているのか……

俺は左頬の傷を、そっと指でなぞった後、
煙草を1本取り出し、それをくわえた。

仕方ない、気晴らしにカード遊びでもしにいくか……

ため息混じりに俺が、小さな賭場へ向かおうとしていると、
怪しげな黒服の男達が何かを話しているのが目についた。

あいつら……どこかで見た記憶がある……
たしか……俺が初めてあの酒場に行った日に、レナに絡んでいた、なんとかって奴らだ。
あれ以来、目立った行動を取らなくなったらしいが、
やはり生きてはいたらしい。

……憎いヤツほどよく生きる。
この世の中は、そんな風に出来ているからな。

よくは聞こえないが、男達の会話の中に、
俺の名前や、「フォルトゥナ」の名が何度も出ているようだった。

気にならないかと言えば、嘘になるが……俺は、逃げるようにその場から立ち去った。

俺が気にしても仕方がない。
「俺には関係のない事」なのだから。



(星七号の独り言)
サビクさんとレナ、レオンの出逢いは
「出逢い」と「勇姿」(非公式レテーナSS)
の通りだと思ってください、こっちではレテーナさんだったけど。

Side:Shadowでは酒場周りにも独自設定を盛り込みました。
「叔父さん……店長」という台詞があるように、
フォルトゥナの店長はレナ&レオンの叔父(レナ&レオン父の弟)です。
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コメント

1. そういえば、れて… レナさんはサビクさんを呼び捨てなんですねぇ。

 だから最初は、その口調からも、個人的にはレテーナは22歳~25歳くらいだと勝手に思っていましたw

 今回はサビクさんの貴重な戦闘シーンですね。
 まぁ、よけてるだけですがw S.S.S.ではよけるシーンすらなかったような気がしますしwww
 あっ 過去編はあったか…!Σ(゚ω゚*)

Re:そういえば、れて… レナさんはサビクさんを呼び捨てなんですねぇ。

コメントありがとうございます!

レナもレテーナも、サビクと年齢が離れているわりに思いっきり呼び捨て、タメ口で、
年齢は離れていても対等な二人ですw
こち亀の両津と麗子の関係性に近いものがありますね。

>サビクさんの貴重な戦闘シーン
確かにあまり戦っている印象がないですが、
一応(描写は少ないですが)本家Side:サビクでもモンスターを相手に戦ったりはしてるみたいです。
とはいえこの段階のサビクが戦うのは(避けるだけだけど)貴重かもしれません!

随分な言われようですが、サビクさんだから仕方ないw

2. 麗子さんに両ちゃんとか呼ばれる両さんが憎いですなw

 私も投稿後にふと、モンスターとは戦っていたなぁと思い出しましたwww
 対人で、と書いておくべきでしたかねw
 対人では、(過去編を除いて)なんか全て真正面から受け止めていたイメージでした…www

 まぁサビクさんですしね! (←?

 攻撃は、受けるより避ける方が難しそうではあります。

Re:麗子さんに両ちゃんとか呼ばれる両さんが憎いですなw

再コメントありがとうございます!

>両ちゃん
いっそレナ(レテーナ)さんにも「サっちゃん」と呼ばせましょうか。
レナ(orレテーナ)「無理!」
サビク「断る!」

>対人
レオンにゲンコツ落としてましたが、グローブのトゲトゲが刺さったりしてないか心配ですw

今回の話でも受け止める案はありましたが、脳内サビクさんが
「もう受け止めるのもめんどい」
と言っていたので必要最低限の動きで避ける流れとなりましたw

3. よう、サっちゃん!!(←うわ馴れ馴れしい…)

 レテーナ改めレナさんが呼ばないなら代わりに、と思ったのですが…
何だこれ、違和感半端じゃないな…orz 返事すらしてもらえない気が…

 テンジの武器にも謎が深まるばかりです。 今のところ鈍器枠のような?
果たして抜刀する日は来るのでしょうか?(*‘ω‘ *)ワクワク

> 「もう受け止めるのもめんどい」
 何でや、避ける方がめんどいやろ!! 受け流す方が楽やろ!!?
 それともあれか、これが達人と凡人以下の差かorz
 サビクさんに武器を抜かせるだけでもかなりの修練が必要そうですね…

Re:よう、サっちゃん!!(←うわ馴れ馴れしい…)

コメントありがとうございます!

>返事すらしてもらえない気が…
確かにそんな様が想像出来ますねw

>テンジの武器
>今のところ鈍器枠
鈍器ですね、基本的には。
色々と秘密(と夢)のある武器だったりします。

スピカ編のラストで抜刀しているような気もしますが、今後の展開にご期待くださいw

サビクさんがこれからどうなっていくのかも、
(本家S.S.S.的に予想はつくでしょうが)ご期待いただけると嬉しいです!

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星七号
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