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Side:Shadow EX1「冒険者の休息」


Strong Stars Story
  Side:Shadow
   EX1「冒険者の休息」
酒場「デイブレイク」にて。

「アナタがテンジちゃんなのね~、
 マスターから話は聞いてるわ~♪」

俺の前に立つ赤毛の男は、体をクネクネとさせながらそう言った。

「アタシはイル。
 よかったら、イルちゃんって呼んでね♪」

そう言ってこちらに微笑むイルからは、
今までの人生では遭遇した事のない、強い違和感を感じていた。

この男……

……男……?

本当に男と呼ぶべきなのか、俺にはわからない。
容姿や、声から察するに男なのだろうが、仕草や振る舞いは女のそれに近い。

「……お前は、男なのか……?」

そう聞こうとすると、イルは人差し指を俺の唇の前に運び、発言を制止した。

「心は乙女……よっ♪」

そう言って微笑むイルは、
隙だらけなように見えて、掴みどころがない、そんな存在に思えて仕方がなかった。

この男は斬っても「いたぁい♪」と言いながら、
無傷で笑っている……そんな気がしてならない。
目の前の未知なる脅威に、俺は知らず知らずのうちに冷や汗をかいていた。

「実はねアタシ、ディアナちゃんやタミードちゃんとは古い付き合いなのよ。
 だから、ナガサーを懲らしめてくれた事は感謝してるわ♪
 ありがとう♪」

礼を言いながら、イルは俺に擦り寄り、俺を見つめてきた。
俺が予想外の事態に慌てていると、ランドルフが困ったような笑顔で助け船を出してくれた。

「そうだ、テンジ。
 港街まで届け物をしてもらえないかい?」
「行こう、すぐに行こう。
 そういうワケだ、悪いな、イル」
「もう、ツレないのね……楽しくなりそうだったのに」

そんなこんなで、俺はイルという名の脅威から逃げるようにデイブレイクを出た。





届け物を、ランドルフの知り合いがやっているという店へ届け、
無意識に空を眺めていると、覚えのある声が聞こえてきた。

「あれっ、テンジだよね?」

振り返ると、そこには先日街で暴れていた獣人モンスターを連れたスピカが立っていた。

「スピカ……
 どうしたんだ、それは」
「この子?
 えっとね……」

スピカによると、以前街で暴れたこのモンスターは
遠く離れた島国「ヤマト」から密かに連れ込まれたものだったらしい。
街で暴れていたのも、船で運ばれたストレスと、慣れぬ環境への不満から来るもので、
落ち着きを取り戻した今は、子犬のようにスピカによくなついていた。

モンスターであるとはいえ、
罪もない者を殺処分するのも人の道に反するため、
スピカは騎士団からの許可を得て、ヤマトへ連れていこうとしていたのだという。

「アナタはヤマトって、行った事あるの?」

スピカがそう問いかけてきた。

「行った事があるというか……
 ヤマトは俺が生まれ育った国だ」

驚きの表情が、あっという間に笑顔に変わっていき、
スピカは「それなら、一緒に行きたいな……なんて!」と提案した。
眩しい笑顔でそう言われては、断るワケにもいかないだろう。

「わかった……俺でよければ、付き合おう」





スピカが出かける準備をしたいと言うため、俺はモンスター
「ブラン(名前がないと不便なため、スピカが名付けたらしい)」
と共にスピカを待っていた。

本当にブランは大人しく、俺にも一切の敵意を見せなかった。

待ちくたびれて空を見上げていると、スピカが「お待たせ!」と言いながら駆け寄ってきた。

「ごめんね、待たせちゃって……」

俺が最初に気になったのは、スピカの髪型が明らかに先程までとは異なっている事だった。
いつものスピカは「ポニーテール」というらしい髪を後ろで結んだ髪型だが、
今のスピカは髪を両側でそれぞれ結びつつも、後ろ髪は下ろしていた。

「……髪型が違うな」

俺に指摘されたスピカは、顔を赤くして慌てていた。

「へっ、変かな……っ!?」
「いや……髪型が違おうと、スピカはスピカだ。
 問題ない」

俺の返答に、スピカは少し不満そうな表情でこちらを見ていた。

「……もう少し、何かあっても良いんじゃないかな? ……なんて……」

小さな声でそう呟くスピカに、俺が「悪くないと思うぞ」と付け加えると、
再びスピカは顔を赤くして、慌てていた。

「えっと……えへへっ……ありがとう」

そしてスピカは、まんざらでもなさそうな笑みを浮かべた。





「……着いたぞ」

ヤマトに到着すると、先程まで大人しくしていたブランも
故郷に帰ってきた事に気付いたのか、喜んでいるように見えた。

遠くに同種のモンスターの姿が見える。
何も言わずにスピカの方を見るブランに、スピカは優しく微笑んだ。

「元気でね。
 みんなと仲良くするんだよ?」

スピカの言葉が通じたのか、通じないのかはわからないが、
ブランは仲間達に迎えられ、その場を去っていった。

「やっぱり、仲間っていいよね」

そう話すスピカに、俺は「そうだな」と笑顔で返した。

「さぁ、せっかくヤマトまで来たんだから、
 この辺りを案内してほしいな?」
「……もちろん、そのつもりだ」





「テンジの実家はこの近くなの?」
「いや……もっと遠く、北の方だ。
 大陸に住むお前達から見れば、小さな島国かもしれないがな」
「そうなんだ」

他愛のない話をしながら、見慣れた景色を歩き、スピカを案内していくと、
俺達の視界に満開の桜が飛び込んできた。

「……!!」

スピカは目を輝かせながら、言葉を失っていた。

「綺麗だろう、ヤマトの桜は」

春風に乗って、桜の花びらが宙を舞った。
スピカは慌ててスカートを押さえたが、すぐに桜色の花吹雪に気付き、
満面の笑みで舞い散る花びらに喜んでいた。

「……うんっ!!」

子供のように、スピカは無邪気に桜を楽しんでいた。
そんなスピカを見ていると、思わず俺も、笑顔になってしまっていた。





桜の舞う並木道を歩いていくと、小さな神社へと辿り着いた。

「ここは……お家?」
「いや……神が祀られている場所だ」

俺とスピカが神社へ向かっていると、
近くで掃除をしていた1人の巫女が、こちらに微笑んでいた。

「……あの人は?」
「巫女だ。
 まぁ……神に仕える者……といったところか」
「そうなんだ。
 あの人が美人なのもあるだろうけど、服装も可愛いね!」

スピカが笑顔で巫女を見ていると、巫女が「こんにちは」と声をかけてきた。

「おふたりは恋人同士ですか?」

巫女の問いに、スピカは大袈裟に戸惑っていた。

「ちっ、ち、ちっ、ちがいます……!?
 えっと……その、友達みたいな……!?」

顔を真赤にしながら否定するスピカを見ながら、巫女は楽しそうに笑っていた。

「恋愛成就の御守りもありますよ、いかがですか?」
「だっ、だから……そういうのじゃなくてっ……!?」


それにしても、この巫女、どこかで出会った事があっただろうか。
どうにも思い出せないが……この空気、この声……
どこかで感じたような気もする……

そう思いながら、巫女の方を見ていると、
何故かスピカが不満そうに俺を見ていた。

「……どうした、スピカ?」
「べーつにー」

そう言いながらも、スピカはしばらく不機嫌な顔を崩さなかった。





慣れない土地を歩き回るのも疲れるだろう。
スピカを気遣い、俺達は小さな茶屋に立ち寄っていた。

「ここのオススメはイチゴ大福だそうだ」

俺がそう話すと、スピカは嬉しそうに笑っていた。

「そうなの?
 私、イチゴ好きなんだ!
 それにしよっと♪」

今日のスピカは、いつもより表情が幼く見えた。

……いや、年頃の少女という事を考えれば、これが自然なのかもしれない。

普段のスピカは人々の希望となるために、「冒険者」として振る舞っている。
周囲からも「年齢相応の少女」として扱われる事はあまりないのだろう。

そのスピカがこうして、無邪気な笑顔を見せているという事は
それだけ、スピカも息抜き出来ているという事か……

そう考えると、俺もいつの間にか笑顔になっていた。

「ふふっ、今日はテンジも良く笑うね?」
「あぁ……そうだな」

笑顔は笑顔を呼ぶ。
昔、誰かがそんな言葉を言っていた事を思い出しながら、俺は再び笑っていた。

「アナタの実家の辺りには、どういうものがあるの?」
「そうだな……温泉があるぞ」

温泉という言葉にスピカは目を輝かせていた。

「温泉!?
 良いなぁ……私、入った事なんだよね。
 やっぱり、気持ち良いの?」

目を輝かせたまま、スピカは質問した。

「あぁ、もちろん。

 ……だが、温泉までの道中にヒドラと似た生物の群生地がある。
 それでもよければ連れていくが……」

快晴だったスピカの笑顔は、ヒドラの名を聞いて、一気に曇っていった。





港街へ戻ってきた頃には、既に空は茜色に染まっていた。

「今日はありがとう!
 とっても楽しかったよ!」

スピカは眩しい笑顔で、そう言った。

「またヤマトに行きたくなったら、言うといい。
 今度は違う場所を案内しよう」
「うん!
 楽しみにしてるね!」

何も言わずに、俺はスピカの笑顔を見ていた。
スピカもまた、俺の顔を見つめていた。


そんな時だった。
「スピカさーん!」
と頼りない声をあげながら、ハイデルが駆け寄ってきた。

「完全無欠の冒険者」の休息の時は、もう終わりらしい。
それでもスピカは凛々しい表情で「どうしたんですか?」と問いかけていた。

仕方がない……俺も、少し付き合っていくか。

「テンジ、行くよっ!」

スピカはいつものように、布で包んだ武器を片手に駆け出していった。



(星七号の独り言)
スピカさん、お誕生日おめでとー!
すっぴーバースデー!

今年のスピカ誕、第1弾としてSide:ShadowのEX1話でした。

すっぴー、完全にデレモードに入っております。
書いててなんかヤキモチ妬きそうになりましたw
はしゃぐスピカ、照れるスピカ、焦るスピカ、嫉妬スピカと
色んなスピカが書けて楽しかったです。

巫女スピカやら、ドキッ!スピカさんの温泉旅やらを妄想出来る内容にしております。
(50回ぐらい女湯の様子を見たいって? 何を言うかこやつめ!)

少しでもニヤニヤ、もしくは「テンジ爆発しろ」という気分になれましたら何よりですw


ちなみに、「ヤマト」とROの「アマツ」は似ていますが、色々と違っています。
(神社の周辺にヒドラがいないとかね!)
というのも、アマツという地名にするとROに馴染みのある方々には
あのイメージで固定化されてしまいそうだなと。

アマツから来た獣人型モンスターって何よ?みたいな部分もあったり、
アマツよりもっと広いイメージで書きたかったのもあり、あえて別の名前にしてあります。
そこら辺も含めて、パラレルな世界をお楽しみいただきたく思います。
 

今回の桜のシーンだけは実は先に書いてあったもので、
リアルに桜が咲いていた頃、通勤中に桜並木を見ながら
「ここにスピカがいたなら」と考えていたものですw

なにはともあれ、すっぴーバースデー!
いつまでも君に幸あれ。
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コメント

1. すっぴーバースデー!!

 ………………(*´ω`*)

 ………ハッ! 幸せ過ぎて顔面崩れるかと思いました!
スピカは赤面させたくなるキャラですねぇ。 可愛い…!
スピカがデレモードならこちらはデレデレモードです、
むしろデロデロモードです(溶けかけ)

> 50回ぐらい女湯の様子を見たい
> 少しでもニヤニヤ、もしくは「テンジ爆発しろ」
 面白いくらいこちらの思考を読まれてて笑いましたwww
 いや、私としては100回以上様子見するのもやぶさかではありまs(殴

 私も何かお祝いしてあげたかったけど、今日は遅くまで帰れんのよ…
ごめんねスピカちゃん…(´Д⊂ヽ また今度アマツ行こうね…!

Re:すっぴーバースデー!!

お祝い&コメントありがとうございます!

>スピカは赤面させたくなるキャラ
ですねー。
(本質的には)感情がハッキリしていて、まっすぐだからでしょうか。

>デロデロモードです(溶けかけ)
そういうモンスターと認識されないよう、願っていますw

>私としては100回以上様子見するのもやぶさかではありまs(殴
スピカさんにバレたら大惨事になる気もしますが、女同士なら大丈夫なのか…?
いや、ファイさんの場合、大惨事になるのもご褒美なのか……!?

>私も何かお祝いしてあげたかったけど
そういう気持ちだけでもありがたいですよ!

>また今度アマツ行こうね…!
スピカ「本当? 楽しみにしてるね!」

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星七号
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