春の日差しが心地良い中、制服に身を包んだ少女は1人、目的地である学校への道を歩んでいた。
少女は、誰かが自分を呼ぶ声に気が付き、振り返る。
……するとそこには、制服姿の見慣れた人物の顔があった。
少女は……
……
「ニャー」
冒険者、スピカ・パルフェイは自分のベッドの上に甘えに来た愛猫、ヒメちゃんによって起こされてしまった。
どうやら、先程の不思議な光景は夢の中の出来事だったようだ。
恐らくは、最近アルナに借りて読んでいる物語の影響だろう。
その物語はミッドガルド大陸ではない世界を舞台にしており、戦いの存在しない世界で、主人公たちは平和な学園生活を謳歌していた。
一方で、スピカたちは幼い頃から戦う事……強くなる事を義務付けられていた。
スピカにとって、戦いのない平和な生活は憧れとも言える存在なのかもしれない。
だから、あんな夢を見たんじゃ……?
スピカは冷静にそんな自己分析をしていた。
「……もしも……生まれた世界が違ったら……」
スピカは小さく呟いた。
スピカの言葉を聞き、不思議そうに自分を見るヒメちゃんを見て、スピカは優しく撫でた。
「ううん、なんでもないよ。
ごめんね、ヒメちゃん」
スピカがアルベルタの街を歩いていると、キャシーを発見した。
「あ! おね……スピカさん!
昨日、久しぶりに幼馴染にあったら今、イチゴ農家で働いてるって言ってました!
今度一緒にイチゴ狩りに行きませんか?」
イチゴ狩りという言葉にスピカは胸踊りつつも、「幼馴染」という言葉が少し気になっていた。
(私の「幼馴染」は兄さんたち……なのかな?
でも兄弟に対して幼馴染っておかしいような……
本当の兄弟じゃないからそれでも変じゃない……のかな……?)
スピカがそんな事を考えていると、スピカの上の空な雰囲気を見抜いたキャシーが「スピカさん、どうかしたんですか?」と声をかけた。
「すみません、大した事じゃないんです。
イチゴ狩り、楽しみにしてますね!」
スピカは笑顔を作り、そう返したが、キャシーはその言葉に納得しなかった。
「スピカさん、何か隠し事してませんか?
私でよかったら相談に乗りますよ!」
ベンチに座り、飲み物を飲みながらスピカはキャシーと話をしていた。
「キャシーさんはどんな子供だったんですか?」
「えっ……?
そうですねー、みんなにはよく明るく元気な子だって言われました!」
楽しそうに過去を話すキャシーを、ほんの少しだけスピカは羨ましく思っていた。
「なんとなく想像出来ますね」
あくまで笑顔を崩さず、微笑むスピカ。
そんなスピカにキャシーは何気ない言葉で返した。
「スピカさんはきっと、昔から素敵で、みんなの人気者だったんでしょうね!
いいなぁー、私もスピカさんと幼馴染になりたかったです!」
キャシーに悪意はない。
スピカはそれを理解していたし、不快だとも思わなかった。
「……そんな事、ないですよ。
知り合いの陰に隠れてばかりの子供でした」
清々しいほどに青く、晴れた空を見ながら、浮かない声色でスピカはそう呟くように語った。
(さっきはキャシーさんに失礼な態度取ってたんじゃないかな……?
後で謝りたいなぁ……)
キャシーと別れ、スピカはアルベルタの街を歩きながら、少し前の自分の行動を反省していた。
その一方で、スピカはずっと頭の片隅で
「もしも自分たちが施設の実験体じゃなかったら」
「もしも自分たちがごく普通の子供時代を送れていたら」
という考えが浮かんでは、それをなんとか振り払おうとしていた。
そんな時だった。
眼鏡をかけた青年、ハイデルが慌ててスピカの方に駆け寄ってきた。
「スピカさん! 大変です!
港の方に見慣れないモンスターが……!」
ハイデルの言葉を聞き、悩んでいる場合ではないと判断したスピカは、一瞬で冒険者としての凛々しい顔付きになった。
「わかりました!
案内してください!」
ハイデルに案内され、現場に向かう途中、スピカは大切な事を思い出し、ハイデルに問いかけた。
「……そのモンスター、うねうねしてませんよね?」
「はい! してないです!」
スピカは少しホッとしながら現場へ向かった。
スピカがハイデルに案内されて行くと、そこには狂暴な獣型モンスターの姿があった。
幸い、まだ人を襲ってはいないようだ。
もしかすると誰かがなんらかの目的で船に密かに乗せていたモンスターが逃げ出したのかもしれない。
「あっ! スピカさん!
あそこを見てください!」
ハイデルが示した場所を見ると、建物の陰に隠れてモンスターの様子を見ているニコル少年の姿があった。
「ニコル君……!?
なんであんなところに……!?」
「わかりません……
逃げ遅れてしまったんでしょうか……?」
スピカは愛用の剣「サクレ・ソヴァール」を包んだ布を一瞬で取り払うと、それを片手にモンスターの前に出た。
「ニコル君!
今のうちに逃げて!」
いきなり武器を持ったスピカが現れた事で、モンスターの意識はスピカに向いていた。
その隙にニコルを逃がす計算……だったのだが、ニコルが思わず「お姉ちゃん!」と叫んだ事でモンスターはニコルの存在に気付いてしまった。
最早選択肢も悩む時間もない。
戦わなければニコルが傷付いてしまう。
スピカは剣を構え、流星の如き鮮やかな攻撃で目の前のモンスターをあっという間に戦闘不能に追い込んだ。
モンスターはその場に倒れ、意識を失ったようだ。
「お……お姉ちゃん……!」
建物の陰からスピカに駆け寄るニコル。
スピカは優しくニコルの頭を撫でた。
「もう大丈夫だよ。
もう、恐くないから」
スピカの言葉にニコルは、泣きながら非常に強い安心感を覚えていた。
その後、騎士団の調べによってあのモンスターはやはり、船で密輸入されたものだった事が発覚。
密輸入した者たちも判明し、事態は終息を迎えた。
スピカが考えていた、いくつもの「もしも」。
もしも生まれた世界が違っていたら、もしも自分たちが施設の実験体じゃなかったら、もしも自分たちがごく普通の子供時代を送れていたら……
もしも、もしも……
確かに、これまでの人生、全てが全て、幸せなものではなかったかもしれない。
だが、これまでの過去があったからこそ、自分は剣術でニコルを助けられたのかもしれないという事にスピカは気が付いた。
ニコルだけじゃない。
スピカは自らのその力で、これまで様々な人々を救ってきた。
「目の前にいる人々を、困っている人々を助けたい!」
その純真で強い想いと、これまでに身につけた力が、常にスピカを走らせ続けていたのだ。
(……もしも……なんていくら考えても、どうにもならないよね。
「後悔しても前には進めない」んだもん。
「一度走り出したら立ち止まるな」……
悩んでいるより、前向きに走り続けた方が私らしい……かな?)
1人でそんな事を考えていたスピカの前に、キャシーと、以前更なる強さについて教えてくれた冒険者が姿を見せた。
「スピカさん、ごめんなさい。
さっきはスピカさんが不愉快な話をしちゃったのかなって……」
深々と頭を下げるキャシー。
キャシーはスピカの過去を詳しくは知らない。
だが、キャシーは自分が原因でスピカを傷つけてしまったのだと解釈したのだろう。
「そんな、頭なんて下げないでください!
あれは別にそういう事じゃなくて……
私の方こそ、失礼な態度取ってたんじゃないかなって思ってて……ごめんなさい!」
互いに頭を下げあうスピカとキャシー。
なんだか、そんな光景が面白くなってきて、3人は思わず笑ってしまった。
「そうだ。
さっきキャシーさんにイチゴ狩りに誘われたんだけど、アナタも一緒に行かない?」
スピカは笑顔で冒険者をイチゴ狩りに誘った。
(お、お姉さまと2人っきりのイチゴ狩りが……!?)
キャシーの計画など知る由もなく、楽しそうに笑顔でいるスピカを見て、やっぱりスピカは笑顔が一番似合うなと感じ、キャシーは2人っきりのイチゴ狩りを諦めた。
(後書き)
Bon anniversaire!
本日、5月11日はS.S.S.実装から5回目のスピカの誕生日です。
このSSはその記念に書きました。
誕生日SSも2周目ですから、今回の誕生日は何を書こうかと悩みまして。
ゴールデンウィークを利用してスピカの新エピソードを考えた結果、こういう話が書きたいな、と思い、形にした感じです。
テーマは「過去の肯定」。
決して幸せな事ばかりではなかったけれど、過去があったから、今がある。
今があるから、未来へ進める。
未来がより良いものであるよう頑張ろう。
そんな話が書きたかったんです。
冒頭の夢のシーンですが、これはlala先生が以前描いていた4コマ漫画「学園S.S.S.」シリーズへのオマージュですw
( http://sputnik.ever.jp/strong-stars-story/sssmm/ )
lala先生と4コマ原案の戸塚犬先生、お二方にネタを使わせてくださいと相談したところ、快く許可をいただけました。
ありがとうございます、lala先生! 戸塚犬先生!
今回も振り向いた先に誰がいるのかはご想像にお任せします。
「狂暴な獣型モンスター」ですが、あえて何と言ってしまうとゲームバランス的な方向に意識が向きそうだったので(スピカが瞬殺してる辺りからスピカの実力を測れるので)名前は出してません。
ゲームと違ってSSは見た目が出ませんから、皆さんが最初に連想した子がうねうねしてなければその子ですw
ちなみに
「後悔しても前には進めない」
という台詞がモノローグにありますが、これ、Side:スピカの選択肢の1つなんです。
スピカさんは意外に格言とか名言の類いが好きな傾向にあるんですよねw
「一度走り出したら立ち止まるな。最後まで走り続けろ!」とか「火も合わされば炎になる(Side:スピカでスピカの信頼度が一定以上の時だけ出現する選択肢)」とかw
…というのも自分自身そういうのが好きだからその影響かな、と思う次第ですw

1. スピカちゃん、お誕生日おめでとう!!
学園SSSシリーズはニマニマしつつ拝見しておりましたよw
もっとも、SSS関連の記事を読むときは大体そんな状態なのですが。
スピカと一緒に生徒会の仕事も捨て難いのですが、
敢えて不良化して絡みを増やすという手もアリか(オイ)
ハイデルさんに「うねうねモンスターじゃないですよね?」と
確認を入れるスピカが可愛いですw そんなに嫌だったのか…
でもたとえうねうねでも、街人のためなら頑張っちゃいそうですね。
互いに謝り合うキャシーさんとスピカちゃんにも和みました。
思いやりの心が持てる優しい子達や…(´Д⊂ヽ
デートの邪魔する形になってしまった冒険者は間が悪いと言いますか…w
もっとうねうねヒドラちゃん達と絡んでいるところも見たいですね。
間違えた、SSSメンバーやアルベルタの街の人々と絡んでいるところ、だw
実装から5回目の誕生日という件を読んだ途端、
「すぴかたん5さい」というテロップを掲げた映像の中で、
ちっちゃいスピカが手を振っているところまで一瞬で妄想しました。
ちょっとモンスターと一緒に斬られてきますねorz
スピカちゃんお誕生日おめでtギャアアアアアア(斬)
Re:スピカちゃん、お誕生日おめでとう!!
>学園S.S.S.
色々やれそうな気がしますねー。
保健室常連のアルゴルとか、「犯人はあいつに違いない…」と言いながら学園七不思議を調査してるルファクとかw
2/14にサビクが登校すると机の中にチョコが!→スピカか!?レテーナか!?→イルちゃんでしたーとかw
(そもそもイルちゃんの初出はバレンタインイベントだった事を書いてから思い出しましたw)
lala先生と戸塚犬先生のおゆるしが出たら番外編としてSSを書いてみるのも面白いかもしれません。
>もっとうねうねヒドラちゃん
望む声が強ければ、いつか書くかもしれませんw
悪の秘密結社の実験によって誕生した「かなり変なヒドラ男」がスピカの前に立ちはだかる!?
>すぴかたん5さい
キャシーさんもそういう妄想をしながら>v<こんな顔してる気がしますw