この世界は、いくつもの「もしも」によって出来ている。
もしも右の道でなく、左の道を歩んでいたら……
これは、そんな1つ2つの話ではなく、いくつもの「分岐点」によって、存在していたかもしれない「世界」のお話。
※
争いの存在しない、とても平和な世界……そこに存在する「星空学園」に少女は通っていた。
少女の名はスピカ、3年生。
誰からも愛され、頼られる生徒会長だ。
今日もリボンで結んだ青い髪を揺らしながらスピカが廊下を歩いていると、教師であるランドルフによって呼び止められた。
「あぁ、スピカさん。
サビクを見なかったかい?」
「サビク……君ですか……?」
サビクはスピカの幼馴染であり、2つ年上の兄のような存在だ。
しかし、サビクは出席日数不足のため留年を2度も経験しており、ついには同学年になってしまった。
スピカ自身、年上で兄のような存在を「君付け」する事にとてつもない違和感を覚えていたが、今は年上ではあるが、同級生なのだ。
「朝登校してるのは見かけましたけど……確かに授業には出てませんでしたね」
「……出席日数が足りないと退学もあり得るからね。
君からも真面目に出席するよう言っておいてくれないかな?」
「はい……わかりました」
スピカはサビクの居場所を知っていた。
校舎裏にスピカが向かうと、大きな木の陰でサビクが昼寝をしていた。
「……もう、やっぱり……!」
スピカは気持ち良さそうに眠っているサビクを大声で叩き起こした。
「……なんだ、スピカか……
……俺は今、睡魔という魔物に……抗う術もなく飲み込まれてる所なんだ……
心配するな、俺は必ずこいつを倒してみせる……」
サビクがそう言い切る前にスピカは竹刀を構え、その竹刀でサビクに打ち込んだ。
間一髪、サビクはその攻撃を避ける。
「っぶねぇ……何するんだよ」
「睡魔はこれで追い払えたでしょ?
ランドルフ先生が真面目に授業に出ないと退学もあり得るって。
さぁ、早く教室に戻ろう?」
スピカがサビクを説得していると、空気を読まずに1年生のレオンが元気いっぱいに「サビクさぁーん!」と言いながら駆け寄ってきた。
「サビクさん!
友達に聞いたんですけど、近所のゲーセンにストロングファイターズの新作が入ったらしいですよ!
後で遊びに行きませんか!?」
ニコニコと笑顔で楽しそうなレオンの話を聞き、サビクは起き上がる。
「よし、じゃあ今からやりに行くか」
「まだ授業があるでしょ!
遊ぶのは今日の授業が全部終わってから!」
サビクは叱られながらスピカに強制連行されていくのだった……
※
「ふぁーぁ……やっと終わったな」
サビクは大きなあくびと共にそう言った。
「……授業中寝てたでしょ?
授業に出ても、ちゃんと勉強しなきゃ意味がないんじゃないかな……?」
やや呆れ気味のスピカだが、サビクは「いいんだよ、俺は去年も同じ授業受けてるんだから」と返し、スピカをさらに呆れさせた。
※
近所のゲームセンターにやってきたスピカたち。
サビクとレオンは早々に対戦格闘ゲームの新作を遊びに行ってしまったため、スピカは1人、店内を歩いていると、近所に住む小学生双子姉妹、アルナ、アイリと遭遇した。
「あれ、2人がこんな所に来てるなんて珍しいね」
「あのね、どーーーしても欲しいぬいぐるみがあるのっ!」
「ぬいぐるみ?」
「お店じゃ買えないやつなんだよ!
今日こそあの子をゲットするんだっ!」
アイリはクレーンゲームの中に入った太い眉毛のポリン人形を指差した。
「ほら、この子!」と笑顔ではしゃぐアイリとは裏腹に、アルナは心配そうにアイリを見ていた。
「アイリちゃん、大丈夫……?
この間も全然取れなくてお店の人に文句言ってたけど……」
「今日のあたしはこの間とは違うの!
たっくさんイメージトレーニングしてきたんだから!」
自信満々に挑戦するアイリ。
だが……
「こんなの絶対おかしい!
なんで何回やっても取れないのーっ!?」
アルナは「やっぱり……」と小さなため息をついた。
「私がやってみようか?」と声をかけようとするスピカの後方から、仮面の高校生が颯爽と現れた。
「……俺に任せろ」
「お兄ちゃん!」
アイリかお兄ちゃんと呼んだ、仮面の高校生ルファクは、コインを投入すると鮮やかなクレーン捌きであっという間にポリン人形をゲットしてしまった。
「……狙った獲物は逃がさない。
例えそれが、クレーンゲームであっても、だ」
ルファクはポリン人形をアイリに手渡した。
「ありがとうお兄ちゃん!
大好きっ!」
アイリに抱きつかれながら、ルファクは優しい声でアルナに話しかけた。
「アルナ、お前は何か欲しいものはないのか?
俺がなんでも取ってやろう」
「そ、それじゃあ……一緒にシールが撮りたい……な?」
アルナは奥の方にある、写真を撮るとそれがシールとなって出てくる筐体の方を控えめに指差した。
「俺が……シール……だと……!?」
アルナとアイリに引っ張られながら、女の子で賑わうコーナーに連れていかれる制服仮面、ルファクであった。
※
「サビクさん、流石ですね!」
サビクは対戦格闘ゲームで次々と挑戦者たちに勝利し続けていた。
「まぁな。
これぐらい朝飯前……っと、挑戦者か」
新たな挑戦者が現れ、サビクはこれまで通りに勝負を引き受けた。
「ROUND1
FIGHT‼」
サビクが得意とする戦法は相手の攻撃の隙を突き、一気に逆転を狙うものだった。
しかし……
「K.O.‼」
相手の攻撃には一切の隙がなく、サビクはあっという間に戦いに敗れてしまった。
今度は自分から攻撃を仕掛けてみたものの、サビクの攻撃の隙を相手は見逃さず、再びサビクは勝負に敗れてしまった。
「サビクさん相手にこんなに強い人がいたなんて……」
驚きを隠せないレオンは、恐る恐る対戦相手の顔を見てみると
「あっ……!?
サビクさん! 向こう!
今の相手の人!」
と慌てながらサビクの手を引き、今まで戦っていたの対戦者の方へと向かった。
するとそこに座っていたのは……
「アルゴル!?
お前、なんでゲーセンなんかに……!?」
「なんとなくここに来たら兄さんに会えるんじゃないかと思ってね。
今日は体調も良いし……」
アルゴルもまた、サビクとは幼馴染で、兄弟のように仲の良い存在であった。
「アルゴル、お前がこんなに強かったなんてな……」
「前に兄さんが遊んでるのを見て、面白そうだったから、いつか一緒に遊びたくて練習してたんだ」
アルゴルの純粋な笑顔に、少し悔しくなったサビクは再び先程の対戦席に戻った。
「今度は負けないからな!
俺の本気を見せてやるよ!」
「嬉しいな、兄さんとこんな風に遊べて」
※
サビクがアルゴル、レオンと共に格闘ゲームコーナーを離れると飲食スペースで仲良くクレープを食べているスピカたちの姿があった。
「あっ! アルゴルも来てたんだ!」
「うん。 今兄さんと遊んできた所だよ」
「アルゴルさん凄いんですよ!
サビクさん相手に連戦連勝!」
「……ん?
アルナ、なんだそれ?」
「今日、みんなで一緒に撮ったシールです」
「ほら見て見て、可愛く撮れてるでしょ?
特にお兄ちゃんが!」
「……やめろッ……」
……もしも、生まれた世界が違ったなら、こんな穏やかな日々が彼らにもあったのかもしれない。
それでも世界は違っても、彼らは強い絆で結ばれている。
いつでも、どんな世界でも。
(後書き)
lala先生と戸塚犬先生からのGOが出たので書いてみた学園S.S.S.を元にした番外編です。
もっと現代日本風な人物名にするか悩んだんですが、あくまでS.S.S.番外編という事で名前はそのままにしてます。
もっと書きたい場面はたくさんあったんですが、今回はこんな具合になりました。
学園S.S.S.なのに学園内の話だけだとアルナアイリを出しづらく、メイン部分は学園外になっちゃいましたw
ギャルゲー&乙女ゲー感溢れる展開とか、学園内での事件を追う話とか考えはしたんですよ?w
でもせっかくなら現代日常風に振りきってもいいかなと思い、こんな感じです。
スピカはどうしても役割的に怒ってるシーン過多になってしまったので、またいつか書くときにはもっとポジティブな部分を書きたいですね。
実は最初と最後のナレーションをミアによるものにしようか悩んだのですが、ミアも学園S.S.S.に出る機会があるかもしれないのでやめました。
別案としてはデイブレイクで寝てるアルゴルが見た夢設定もやめましたw
最後のシーンでスピカたちが食べているクレープは
スピカ、アルナ:チョコイチゴクレープ
アイリ、ルファク:チョコバナナクレープ
ですw
「お兄ちゃんも食べようよ!」と誘われ、ルファクも食べてたというw
(ハムチーズという選択肢もあるが、やはりクレープは甘いものの方が良いだろう……)と思ったとか思わないとかw
巻き込まれ型人間ルファクの明日はどっちだ。
恒例のドット絵ですが、lala先生の4コマを見つつ打ちました。
しかし、やはり小学生レベルのドット力(ぢから)ですのでlala先生のイラストと比べる事すらおこがましいレベルなのですが…orz
制服デザインは「生まれた世界が違ったなら」をベースに、配色は「生まれた世界が違ったなら」と「学園S.S.S.2」でそれぞれ違うっぽかったので2パターン作りました。
スカートとか完全想像ですけどw

1. こんな青春送りたかった(血涙)
スピカちゃんは竹刀持ってるから剣道部かな?
それともあくまで、対サボり魔用武器として持ち歩いてるだけかな?
スピカ会長! 私の睡魔も追い払って下さい!!
でもまぁ竹刀は防具着けてても痛いので、生身で食らいたくはないですねw
ランドルフさんは担当教科何なんだろう…?
何にせよ、親身に生徒の面倒を見て下さる先生に違いない!
「いいんだよ、俺は去年も同じ授業受けてるんだから」か…
あれ、おかしいな? 目から汗が止まらないんだけどな…(´;ω;`)
もーサビクさんってばー、相変わらず人のハートを射止めるのが上手いですね!
そのセリフ聴いてから胸がズキズキ痛むんですがどうしてくれるんですかorz
一年生のレオンとどんな経緯があって仲良くなったのか気になりますね。
不良に絡まれているところを助けたぐらいしか思いつかないのですが。
双子ちゃんがランドセル背負っているところを想像するだけで
萌えますね、可愛いですねぇエヘヘヘヘ(おまわりさんわたしです)
ちゃんと保護者(ルファク)もいるので安心ですね。
こんな可愛い子が二人だけで外出して、
万が一怪しい大人に絡まれたら一大事ですからね(ダレノコトカナ)
プリクラか… こんな風にお願いされたら撮るっきゃねぇよなぁ、
ルファク兄ちゃんよぉw 何というか、頑張れwww
アルゴルは学校には通っていないんでしょうか?
体調の関係で何か理由がありそうですね。
年下にゲームで負けるとちょっと悔しい気持ちは分かりますw
サビク兄ちゃんも頑張れ!
…青春って、何だったっけなぁ(遠い目)
あ、リンク追加ありがとうございました!!
書きたいことしか書いていない駄ブログですが、よろしくお願いします。
Re:こんな青春送りたかった(血涙)
いつもご感想ありがとうございます!
励みになります!
>スピカの竹刀
基本的に対サビク叩き起こす用装備ですが、様々な部活から助っ人で呼ばれるので剣道部に助っ人に行く事もある感じです。
美術部のキャシーさん「スピカさん、絵のモデルになってください!」
なんだか邪なものを感じます…
>ランドルフ先生の担当教科
たぶん地理歴史じゃないかと予想してます!
>サビクとレオンの出会い
レオンの自転車が壊れて困ってる所をサビクが助け、お礼をするとレオンの家に行ったら同級生のレテーナの弟だと判明!的展開を思い付きましたが、同学年にスピカとレテーナがいたらキャラ被りますかね?w
>ランドセルを背負う双子ちゃん
lala先生が以前描いてましたが、とても可愛らしかったですね。
>アルゴル
この世界ではスピカと同い年の3年生ですが、スピカ&サビクとは別のクラスです。
病弱なのでよく保健室のお世話になっていますが、怒らせると学園一恐いとかどうとか。
>リンク
いえいえ、こちらこそありがとうございます!
>青春って何だっけ
春を意味する言葉で、朱夏、白秋、玄冬と続きます。
つまりS.S.S.で言う所のスピカさんは青春の象徴なのです!